新規抗悪性腫瘍薬S-1のラット経口投与による26週間反復投与毒性試験
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概要
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雌雄のラットを用いてS-1 1,5および10 mg/kg/dayを26週間連続投与し,その反復投与毒性および回復性を検討した。1. 一般状態の観察では, 5 mg/kg/day群の雌雄の少数例に尾部の角化がみられ,10 mg/kg/day群の雌雄全例に足底部・手掌・尾部の角化がみられた。その他,雄あるいは雌で眼,耳介の蒼白化,切歯の白色化,軟便・血尿・脱力・呼吸緩徐・自発運動の減少などが散見された。2. 体重は,10 mg/kg/day群の雌雄で投与開始後2週 頃から増加抑制がみられ,その後も低値で推移した。3. 摂餌量は,10 mg/kg/day群の雄で投与開始後14週まで低値を示したが,その後は対照群とほぼ同様の推移を示した。4. 眼科学的検査および糞潜血検査では,S-1投与に起因する変化はみられなかった。5. 尿検査では, 5 mg/kg/day以上の群の雌雄で蛋白の増加,10 mg/kg/day群の雌あるいは雄で沈渣に上皮細胞や白血球の増加・浸透圧の減少がみられた。6. 血液学的検査では, 5 mg/kg/day以上の群の雌雄で赤血球数の減少およびMCHの増加,10 mg/kg/day群の雌雄でヘモグロビン量およびヘマトクリット値の減少,血小板数,フィブリノーゲン量およびMCVの増加がみられた。7. 血液生化学的検査では,10 mg/kg/day群の雌雄でA/G比,アルブミンおよび塩素の減少,総コレステロール,遊離コレステロール,中性脂肪およびリン脂質の増加がみられた。8. 臓器重量では, 5 mg/kg/day以上の群で胸腺重量の減少がみられ,10 mg/kg/dayでは腎重量の増加,精巣および精巣上体重量の減少がみられた。9. 剖検では,リンパ系組織および精巣の小型化,腎の大型化・表面顆粒状などが認められた。10. 病理組織学的検査では,5 mg/kg/day以上の群でリンパ造血器系萎縮性変化,慢性腎症に類似した腎病変などが認められたほか,10 mg/kg/day群では,雄あるいは雌に尾部,足底,手掌の表皮の肥厚と炎症,切歯のエナメル芽細胞の変性・配列不整,精巣の萎縮性変化などが認められた。11. 5週間の休薬により,足底部・手掌・尾部の角化,腎障害が残存するものの,いずれの変化も回復あるいは回復傾向がみられた。12. 無毒性量は,雌雄とも1 mg/kg/dayであった。
- 1996-11-27
著者
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林 泰司
大鵬薬品工業
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箱井 加津男
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
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大前 重男
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
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別枝 和彦
大鵬薬品工業株式会社製薬センター安全性研究所
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林 泰治
大鵬薬品工業株式会社 製薬センター 安全性研究所
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別枝 和彦
大鵬薬品工業 安全性研
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