マウスの網膜電図記録法の検討およびそのヨーソ酸ソーダによる網膜症への応用

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マウスの網膜電図(ERG)を指標とした視覚毒性試験法の確立を目的に本検討を実施した。先ず,ステンレス線で作製したコイル型電極を用いたERGの記録条件を設定した。次いで,既知網膜毒であるヨーソ酸ソーダ(SI)の12.5,25及び50 mg/kgをマウス静脈内に単回投与した後,経日的にERGを記録し,投与30日後に網膜の病理組織学的検査を実施しその影響を調べた。1. ウレタン,キシラジン及びケタミンの併用麻酔下で,光刺激強度1.2 J,光刺激頻度0.2あるいは0.1 Hz,加算回数16回,暗順応時間30〜60分において,ERG上のa波,b波,律動様小波及びc波を比較的安定して記録できることを確認した。なお,記録時には保温マットを用いてマウスの体温を37〜38 ℃保持した。2. SIの25 mg/kg投与群では,投与1日後に先ずc波の消失,律動様小波の減弱,a波及びb波の増大が,次いで3ないし7日後よりa波及びb波の減弱が認められ,その後,投与28日後まで回復性はみられなかった。50 mg/kg投与群では上記変化が顕著かつ早期に認められた。3. 病理組織学的には,SIの25 mg/kg以上の投与群で外顆粒層の雛曲,杵・錐状体層の配列の乱れ及び視細胞の減少,網膜色素上皮細胞の腫大及び数の減少が認められた。これらの変化の程度は50 mg/kg投与群でより顕著であった。4. 以上より,ステンレス線で作製したコイル型電極を用いてマウスERG上のa波, b波,律動様小波及びc波を比較的安定して記録できること,既知網膜毒であるSIのERGに及ぼす影響を検出できたこと,更に,網膜の病理組織学的検査からERGの変化を裏付ける所見を得たことから,本ERG記録法はマウスにおける視覚毒性試験法として有用な方法であることが確認された。
日本トキシコロジー学会の論文
1996-06-05

マウスの網膜電図記録法の検討およびそのヨーソ酸ソーダによる網膜症への応用

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