分子生物学部門
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概要
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老人病研究所・分子生物学部門は, 日本医科大学大学院分子生物学科目であるとともに, 丸子アイソトープおよび組換えDNA実験施設を兼ねています。現在20名の研究者(教職員6名, 学内・学外からの院生・研究生他14名)が日夜, 本学学術フロンティア推進事業, 共同研究推進センターとして, ヒトゲノムプロジェクトの推進を基盤とした様々なヒト疾患の遺伝子レベルでの病因解明と診断法の開発に取り組んでいます。1)ヒトゲノム解析プロジェクト(文部省ゲノムサイエンス計画研究, 文部省総合がん総括班研究) : ヒトゲノムプロジェクトでは, すでにヒト全染色体地図が作製され, 3年以内にその上に位置する約10万個の遺伝子の存在が明らかになると予想されています。我々は乳癌, 肝癌, 膀胱癌, 甲状腺癌の検体を用いて, 高頻度な異常を見出した染色体について高精度ゲノム欠失地図を作製し, 共通して欠失するゲノム領域の限局化から, これら癌の発生進展に関わる癌抑制遺伝子の同定を目指しています。特に, 1-cM以内に原因遺伝子の存在位置を限局化したのち, そのゲノム領域をYAC, BAC, PAC, などのクローンでカバーした後, ショットガン法によるゲノムシークエンシングを行い, コンピュータを用いたエキソン予測法により未知の遺伝子をクローニングしています。2)ヒトcDNAプロジェクト(文部省ゲノムサイエンス計画研究, 文部省総合がん総括班研究) : 癌をはじめとする各種疾患で染色体位置を限局化したものに対して, それら領域よりESTを多数同定し, cDNA発現プロファイル解析を行うことにより, 疾患関連遺伝子をクローニングしています。3)ヒトDNA多型(SNP)解析プロジェクト(厚生省長寿科学研究, 厚生省特定疾患) : ヒト疾患に対する遺伝的感受性を規定している遺伝子多型解析を用いて骨粗鬆症, 高脂血症, 高血圧症の候補遺伝子について, 大規模な人口の解析から各遺伝子座の遺伝的多様性と表現型間の関係を検討しています。4)乳癌・甲状腺癌の遺伝子診断(文部省がん診断治療研究, 同基盤(c), 厚生省がん研究助成金, 車両財団研究助成) : 乳癌および甲状腺癌の遺伝子診断の研究については, 多形性DNAマーカーを用いた解析から癌の悪性度, 転移, 再発, 生命予後に関わる遺伝的変化の特定と臨床応用を目指しています。特に, 本年度は, 乳癌切除例を用いて解析し, 特定の染色体領域におけるLOHの有無と術後予後(再発, 癌死亡)との間に有意な相関が存在することが判明しました。再発率, 生存率の両面からの解析により, 再発には関与しないが癌死には有意な領域が存在することがわかりました。個々の乳癌において様々な染色体欠失がおこり進行進展上の種々の性質が決定されると考察されるが, 特定の領域の染色体欠失が再発, 癌死亡を反映することから, DNAマーカーによる手術時の切除乳癌の遺伝子診断は乳癌の再発と生命予後の判定のおいて有用と考えられます。
- 日本医科大学の論文
- 2000-03-25
著者
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