分子生物学部門
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概要
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老人病研究所・分子生物学部門は, 日本医科大学大学院分子生物学科目であるとともに, 丸子アイソトープおよび組換えDNA実験施設を兼ねています。現在26名の研究者(教職員6名, 学内・学外からの院生・研究生他20名)が日夜, 本学学術フロンティア推進事業・共同研究推進センターとして, ヒトゲノムプロジェクトの推進を基盤とした様々なヒト疾患の遺伝子レベルでの病因解明と診断法の開発に取り組んでいます。1)ヒトゲノム解析およびcDNAプロジェクト(文部省ゲノムサイエンス研究, 文部省総合がん総括班) : 乳癌, 肝癌, 膀胱癌, 甲状腺癌の検体を用いて, 高頻度な異常を見い出した染色体についてこれらの癌の発生進展に関わる癌抑制遺伝子の同定を目指しています。特に, 1-cM以内に原因遺伝子の存在位置を限局化したのち, そのゲノム領域をYAC, BAC, PACなどのクローンでカバーした後, ショットガン法によるゲノムシークエンシングを行い, コンピュータを用いたエキソン予測法により未知の遺伝子をクローニングしています。本年は特に, 17q25.1および4q21領域を集中的に解析しました。2)新規がん関連遺伝子の同定(文部省ゲノムサイエンス研究, 文部省総合がん総括研究) : 染色体位置を限局化したものに対して, それら領域よりESTを多数同定し, cDNA発現プロファイル解析を行うことにより, 疾患関連遺伝子をクローニングしています。このようなゲノムアプローチを駆使し, 17q25.1領域からDMC1,UBE2,DMHC, SRP68,4q21領域からJNK3A1など, 種々のヒトがんにて発現消失を示す新規遺伝子のクローニングに成功しました。また, 乳癌における8q23上のEBAG1遺伝子の増幅, 膀胱癌の9q34における1-Mbのホモ接合欠失領域の同定, 肝芽腫における4q21上の部分欠失領域の同定, 子宮筋腫における種々のHMGI-C融合遺伝子の同定などを遂行しました。3)ヒトDNA多型(SNP)解析プロジェクト(未来開拓研究推進事業, 厚生省長寿科学研究, 厚生省特定疾患) : ヒト疾患に対する遺伝的感受性を規定している遺伝子多型解析を用いて骨粗鬆症, 高脂血症, 高血圧症の候補遺伝子について, 大規模な人口の解析から各遺伝子座の遺伝的多様性と表現型間の関係を検討しています。特に, 骨粗鬆症は骨量の減少により骨の脆弱化が進み, 骨折の危険性が増す疾患であり, 急速かつ深刻な高齢化社会を迎える我が国においては, その成因解明, 発症前診断, かつ新しい治療法の開発は急務です。骨粗鬆症の発症には複数の遺伝子の関与が示唆されており, 疾患関連遺伝子を同定するためには, 近年進歩の著しい遺伝子多型のゲノムワイドな体系的解析が有力な手段です。我々は, ゲノム上の数万種類のSNP=1塩基多型マーカーを用いることにより, 骨量減少機序, 骨粗鬆症の発症, 進展および種々の薬剤感受性に関与する遺伝子を探索し, 早期の予防, 治療へ応用することを目指しています。4)乳癌・甲状腺癌の遺伝子診断(文部省がん診断治療研究, 同基盤(c), 厚生省がん研究助成金) : 乳癌および甲状腺癌の遺伝子診断の研究については, 多形性DNAマーカーを用いた解析から癌の悪性度, 転移, 再発, 生命予後に関わる遺伝的変化の特定と臨床応用を進めています。特に, 乳癌切除例では特定の染色体領域におけるLOHの有無と術後予後(再発, 癌死亡)との間に有意な相関が存在することが判明しました。乳癌手術5年間の追跡調査と遺伝子解析により, no(リンパ節転移陰性)乳癌, n1・2(リンパ節転移陽性)乳癌の各々において術後予知因子となる染色体欠失を同定しました。これらの結果を踏まえて, 平成12年夏より, 癌研附属病院および長野県下の主幹病院と連携し, 毎週約12症例(年間600症例)の乳癌の遺伝子診断を実施し, 臨床サイドへ遺伝子診断の結果を報告しています。
- 2002-03-25
著者
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