水田土壌中での稲わらの分解と窒素の挙動

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水田土壌中での窒素の挙動と稲わらの分解の関係を明らかにするために,圃場および培養実験で重窒素標識稲わらを使用し,肥料窒素,稲わら窒素,土壌窒素の挙動と稲わら分解について検討した。あわせて,稲わら施用に伴う水稲の生育・窒素吸収についても検討した。得られた結果は以下のとおりである。1)土壌中の全アンモニア態窒素は,稲わら施用の有無にかかわらず,ほぼ同様に推移し,7月上旬には消失した。肥料由来のアンモニア態窒素は,稲わら施用により減少するが,その量はわずかであった。2)施用稲わら中の窒素は,移植直後の低温条件でも無機化されることが明らかとなった。3)施用された稲わらの回収率(乾物)は,7月4日に郡山土壌で約50%,相馬土壌で約70%,9月12日でそれぞれ20%,30%であった。回収稲わら中の窒素は,稲わら由来が17〜27%,土壌由来が65〜77%,そして肥料由来が10%程度であった。回収稲わらにとり込まれた肥料窒素の絶対量は,施肥量の約2%にすぎなかった。4)施用稲わら中の窒素のうち,水稲によって吸収利用された部分は約20%であった。その他の大部分は未回収であった。5)施用稲わらの分解過程を培養実験からみると,セルロース分解と,稲わら中の有機態窒素の分解に伴う窒素の放出は異なることが明らかとなった。すなわち,低温条件では,稲わらのセルロース分解はあまり進まないが,窒素の放出は高温条件と同じように進行する。6) 稲わら施用に伴う水稲の生育抑制は,土壌中のアンモニア態窒素の推移からみるかぎりにおいては,稲わら施用に伴う窒素飢餓ではないことが明らかとなった。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1986-08-05

水田土壌中での稲わらの分解と窒素の挙動

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