スメクタイト質土壌のリン酸吸収係数における交換性イオンの役割 : 八郎潟干拓地土壌について

概要

論文の詳細を見る
八郎潟干拓地土壌の中には活性アルミニウム、鉄含量が少ないにもかかわらず、黒ボク土に匹敵するような高いリン酸吸収係数を示すものがある。その原因を検討した結果、土壌の交換性Ca^<2+>, Mg^<2+>がリン酸吸収係数測定のために添加したリン酸アンモニウム液のNH_4^+によって交換液出され、リン酸イオンと反応してCaHPO_4・2H_2O, MgNH_4PO_4・6H_2Oの沈殿を生成するためであることが明らかになった。CaHPO_4・2H_2O, MgNH_4PO_4・6H_2Oの結晶は、土壌にNH_4Clを加えた後溶液をとってそれにリン酸アンモニウム液を添加したときに生成する沈殿のX線回折から同定した。これらの結晶はCa^<2+>またはMg^<2+>とPを1:1の割合で含む。この関係に基づいて、未処理土壌のリン酸吸収係数と交換性イオンをNa型にした土壌のリン酸吸収係数との差はモル換算により交換性Ca^<2+>とMg^<2+>の和とほぼ一致することを確認した。八郎潟干拓土壌の過リン酸石灰との反応生成物が黒ボク土の場合と異なることは植物試験でも示された。同量のリン施肥をした場合、八郎潟干拓土壌におけるデントコーン、コマツナの生育量はリン酸吸収係数がほぼ等しい黒ボク土に比べて明らかになった。
1991-02-05