生育の遅いダイズ根粒菌の単生条件におけるニトロゲナーゼ活性の発現要因について
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概要
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生育の遅いダイズ根粒菌を用い単生条件におけるニトロゲナーゼ活性の発現要因について検討を行い,以下の結果を得た.1) 生育の遅いダイズ根粒菌のニトロゲナーゼ活性の発現には,微好気条件での培養を必要とせず,好気および嫌気条件において活性が発現した.活性の発現には窒素源,炭素源およびモリブデンが必要な要素であり,多くの微量元素と補酵素類の添加は必要としなかった.これら必要な要素の働きは,窒素源としてのグルタミンは細胞の増殖に,炭素源としてのリンゴ酸は呼吸基質として ATP と還元力の供給に,モリブデンはニトロゲナーゼタンパクの構成に必要な成分として,それぞれ必要なものと考えられた.2) ATP と還元力を供給するための炭素源はマニトールなどの糖ではなく,有機酸類と考えられた.これら有機酸はコハク酸,リンゴ酸,フマル酸およびクエン酸などでありこれらすべての有機酸の添加により活性が認められたが,有機酸の種類と濃度により異なる活性の値を示した.有機酸のなかでリンゴ酸の 50 mM の添加において最大の活性が示され,リンゴ酸は単生条件におけるニトロゲナーゼ活性の発現に対し,ATP と還元力の供給に有効な炭素源と考えられた.3) 誘導培地の形態がニトロゲナーゼ活性におよぼす影響は,固体培地および液体培地のいずれにおいても活性が認められた.活性は固体培地のほうが液体培地に比べ高い活性が示され,細胞増殖量は固体培地のほうが多く,液体培地の細胞増殖量は固体培地の約 50% であった.4) ダイズ根粒菌 76 菌株のすべてにおいてニトロゲナーゼ活性が認められた.これら菌株の活性の発現は気相条件により異なる値が示され,好気条件で高い活性を示す菌株,嫌気条件で高い活性を示す菌株および好気と嫌気の両条件でほぼ同じ活性を示す菌株の三つのタイプに分けられた.5) 以上の結果から,培地組成の簡易なGI培地を用いることにより,種々の要素を添加したときのニトロゲナーゼ活性のより明確な発現要因の解明が行えるものと考えられた.
- 1992-06-05
著者
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高橋 利和
十勝農業協同組合連合会農産化学研究所
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伊藤 晃
十勝農業協同組合連合会農産化学研究所
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沢崎 明弘
十勝農業協同組合連合会農産化学研究所
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伊藤 晃
設楽普及所
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沢崎 明弘
十勝農業協同組合連合会
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