特定微生物用培地を利用した土壌の窒素固定活性(アセチレン還元)の測定と土壌の化学性との関係
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概要
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土壌の窒素固定活性を種々の培地を用いて測定し、つぎの結果を得た。1) 9種類の特定微生物用培地と土壌へのグルコース添加法を用いて土壌の窒素固定活性を測定した。1処理を除き他のすべての培地で窒素固定活性が認められ、とくに酵母エキスーマニトール固体培地で高い窒素固定活性が示された。2)酵母エキスーマニトール固体培地で高い窒素固定活性を示した窒素固定微生物は、グラム陰性の酵母要求性株と推定された。3) Azotobacterの種々の選択培地での窒素固定活性の測定において、A. chroococcumとA.beijerinckiiの選択培地での活性は、A. vinelandiiの選択培地よりも高い値を示した。このことはA. chroococcumとA. beijerinckiiは広く耕作地に生息し、A. vinelandiiの生息は限定されていることを示唆していた。4)採取地帯の異なる30点の土壌の特定微生物による窒素固定活性は培地にYMAを用いることにより測定が可能であった。また、土壌を測定する前に培養することによりエチレン生成開始までの遅滞と測定時間の短縮を行うことが可能であった。5)土壌30点の化学性と窒素固定活性の間に、高い正の相関関係が得られたのは、石灰飽和度(r= 0.572, n=30, p < 0.001), 塩基飽和度(r= 0.651, n=30, p<0.001),マンガン(r=0.697, n=30, p <0.001)および銅(r=0.547, n=30, p<0.001)であった。高い負の相関関係が得られたのは、リン酸吸収係数(r=-0.621, n=30, p<0.001),腐植(r=-0.541, p<0.01)およびCEC(r=-0.479, n=30, p<0.01)であった。6)以上の結果から、YMAおよびAz-Starch, Az-Sucrose, Az-Ramonseなどの特定微生物用培地を組み合わせて土壌の窒素固定活性を測定することにより、土壌中の窒素固定微生物の生息密度の推測、多種類の土壌間の窒素固定活性の比較および土壌の化学性との関連の解明などへの応用が行なえるものと考えられた。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1991-04-05
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