水稲苗の素質に関する研究 (第二報)
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概要
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前報に於てすでに報告した水苗と畑苗の生理的特性が本田移植後にどのような形で変化して行くかを知るために水苗と畑苗とを鴻巣の排水艮好田及び隣接する排水不良田に栽培して, その生育経過及び二, 三の生理的特殊性を比較した. 1. 畑苗は水苗に較べて発根力が高く, 初期生育極めて良好である. 移植後ただちに多量の窒素を吸収し, 地上部及び根部ともその乾物重水苗より大きいにもかかわらず, 体内窒素含量は水苗より高い. 他方畑苗の澱粉含量は水苗のそれより著しく高いが, 本田移植後もその性質は残存し, 7月下旬に体内澱粉含量が最低となる時にも尚, 畑苗から生育せる稲でその澱粉含量が水苗区より高い. 畑苗はこのように移植後活発に窒素を吸収すると共に, 苗の中に貯蔵せる多量の澱粉を利用して, 旺盛な初期生育を行う. 2. 畑苗の単立乾物当り呼吸量水苗より低いが, 本田に於ても生育初期には既して畑苗の方が低い. 根の呼吸量移植直後に畑苗の方が活発な発根を反映して水苗より高いが, その後7-8月を通じて畑苗の方が低い. 根の積極的吸水能を表わすと見られる溢泌液量, 根の呼吸量と傾向を同じくして畑苗の方が水苗より生育せるものに比して少ない. 3. 苗代時代での Starch phosphorylaseの活性は水苗に比し畑苗著しく高い. 全炭水化物含量には大差がなくとも畑苗は水苗に較ベ, 炭水化物を澱粉として貯蔵する性質が強いこと前報に述べたが, 畑苗のこの特性 Starch phosphorylase活性の著しく大なることに起因すると考えられる. 移植後も7月下旬頃まで畑苗区の方が活性が高いが, その差は漸減する. Catlase 及び Peroxidase活性も畑苗の方が水苗より高いが, catalase 活性分けつ盛期ごろ, Peroxidase活性移植後間もなく逆に水苗の方がやや高くなるようである. 4. 畑苗水苗に比しMn含量が著しく低いが, この性質は本田初期に残る. これに対応してこの時期に水苗から生育せる植物では Fe及び燐酸の根から葉鞘部, 葉鞘部から葉身えの移行が阻げられているが, 畑苗区でそれが見られないか或は少ない. Mnは体内のFeを酸化し, 同時に燐酸をFe PO_4として沈澱せしめることにより, Fe及び燐酸の体内移行を阻げるものと考えられる.
- 日本作物学会の論文
- 1957-12-20
著者
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