低温ストレス下におけるイネのラミナジョイント細胞の伸長, 発芽および幼苗生長のブラシノライドによる促進作用
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概要
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イネ幼苗のラミナジョイント部位を用いたオーキシン依存の細胞伸長作用の検定系では, ブラシノライド(BR)とインドール酢酸(IAA)はそれぞれ単独で作用を発揮するが, 両者の活性を低温条件下で比較したところ, IAAは検定温度(通常の試験では30℃)の低下にともなって活性が著しく低下し, 15℃では全く活性を示さなくなった.これに対して, BRは検定温度が低下しても顕著な活性を示し, 15℃でも一定の活性を維持した.しかし, ブラシノステロイドの一つのホモブラシノイド(HBR)は, 同じグループのBRやカスタステロン(CAS)に比べて低温下での活性は低かった.また, BRとIAAとの間には低温下で相乗的な細胞伸長促進作用が見られる場合があった.このような作用を示すBRについて, イネの直播栽培や移植栽培上の利用場面を考えて, 種子浸漬処理および茎葉散布処理が, 発芽や幼苗生長に対する作用を検討したところ, 催芽期間中の種子浸漬の場合には, BRの浸種開始24時間の処理で, 発芽後の初期生育が促進された.イネ種子をBR浸漬処理して湛水直播栽培し, ガラス室条件下と低温条件下で生育させたところ, 何れも発芽率の向上および生育促進作用が認められた.4葉期のイネ苗にBRを茎葉散布すると, 温室条件だけではなく, 低温条件下でも草丈の伸長促進および地上部・地下部の新鮮重増加がみられた.この時の葉身長をみると, 散布時に完全に展開した第4葉ではBRによる伸長促進はないが, 展開中の第5, 第6葉に対しては認められ, その作用は低温条件下において強い傾向が見られた.以上のことは, BRは, 低温ストレス条件でIAAにはないイネ幼苗期の細胞伸長作用を示し, 湛水直播栽培および移植栽培を想定した低温下での発芽・初期生育の促進作用をも発現することを示している.
- 日本作物学会の論文
- 2001-09-05
著者
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