茶園における多肥栽培の実態と土壌の酸性化および根の成長阻害
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概要
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三重県北部茶栽培地帯の茶園から150ha, 126筆を選び, 施肥量および土壌の理化学性, 根の分布状態を調査するとともに, 酸性化の要因を土壌溶液法により解析した. 年間10a当たり施肥量は, 窒素58〜283kg(平均147kg), リン酸9〜107kg(同57kg), カリウム10〜81kg(同46kg)であり, 特に窒素量は200kgを越える超多肥茶園が11%を占めた. 施肥窒素量が140kg以上の茶園では, うね間の表面から深さ20cm程度までの第1層における根の分布は極端に少なく, 180kg以上ではこの土層内に健全根が全く見られなかった. 栄養診断基準となる一番茶開葉初期の越冬葉窒素含量は, 施肥窒素量200kg程度までの増施で増加傾向はみられたが, 必ずしも施肥量と対応しなかった. そして200kgを越えると越冬葉窒素含量は低下する傾向さえ認められた. 各茶園におけるうね間部の土壌pH(H_2O)は, 2.9〜5.9の範囲に分布したが, 第1層では74%の茶園が4.5以下の強酸性を示し, さらに地表から深さ20cm以上の第2層では, ほとんどの茶園が4.5以下であった. そして施肥窒素量が多いほど土壌pHは低い傾向がみられた. また, うね間部と株元部の土壌溶液濃度は著しく異なり, うね間では陽イオンに対して陰イオンが多く, 特にSO_4^<2->が多かった. 土壌溶液の強酸性の主要因は, NO_3^-やSO_4^<2->の高濃度によるもので, 陰イオンが陽イオンより多いときpHは4以下であった. この両イオンの差を土壌溶液中のAl^<2+>が陽イオンとして補償している場合は, pHは3台であったが, さらに陰イオンが多くなるとpHは3以下の強酸性を示した. このように多肥栽培下にある茶園土壌の化学性は, 極めて異常な様相を呈し, 茶樹根の発達阻害や根腐をもたらしていることが明らかとなった.
- 日本作物学会の論文
- 1995-09-05
著者
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