開花前の低土壌水分が稔実期の乾燥条件におけるダイズの乾物生産と生理生態的性質に及ぼす影響
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概要
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わが国の夏作物の生育期間には, 梅雨と盛夏の比較的乾燥する時期がある. 乾燥地や半乾燥地に比較すれば乾燥する時期でも土壌水分の減少ははるかに少ないが, この期間に夏畑作物は干ばつ害を受けることがある. 夏畑作物は栄養生長の盛んな時を梅雨期の土壌水分が多く湿度の高い条件で過ごすので, 茎葉は大きく繁茂し, 根は浅くはり根系の発達は劣る. このような作物は梅雨後の夏の比較的乾燥する条件におかれると, 表層土壌の水分が減少しただけで水ストレスを受ける, いいかえると, 梅雨期の多雨多湿条件が夏畑作物の水ストレスを助長していると考えられる. この考えを検討する試みとして, ダイズを用いて開花期まで湿潤土壌(湿潤区)と低水分土壌(乾燥区)の圃場に生育させた後, 両区とも稔実期を低水分土壌で生育させ, 乾物生産とこれに関係する生理生態的性質を比較した. その結果, 乾燥区のダイズは湿潤区に比較して稔実期の純同化率(NAR)が高いことによって乾物生産を高く維持し, 子実生産も高くなった. 乾燥区のダイズのNARが高くなったのは, (l)土壌の深くまでよく発達している根系をもち, (2)土壌の深い部分から水分を多く吸収でき, その結果, (3)日中の葉の水ポテンシャルを高く維持し, 光合成速度の日中低下が小さく, そして(4)老化に伴う光合成速度の減少が小さい, などによるものであった. 本研究により, わが国の夏畑作物の栽培においては夏のかんがいだけでなく, 梅雨期の排水などによって根系をよく発達させることが重要であることが指摘できた.
- 日本作物学会の論文
- 1994-12-05
著者
-
平沢 正
東京農工大学大学院農学府
-
石原 邦
東京農工大学・大学院共生科学技術研究部
-
宮本 大輔
東京農工大学農学部
-
田中 一生
東京農工大学農学部
-
武居 理英
東京農工大学農学部
-
平沢 正
東京農工大学
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