リン酸カルシウム系結晶化ガラスの歯冠色調に関する基礎的研究
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概要
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現在, 歯冠修復用材料として開発, 研究されているキャスタブル・セラミックスは, 組織構造からマイカセラミックス, アパタイト結晶化ガラスおよびリン酸カルシウム系結晶化ガラスがあり, すでに実用化されているものも少なくない. とりわけリン酸カルシウム系結晶化ガラス(以下, 結晶化ガラスと略す.)は, 短鎖リン酸塩ガラスを母ガラスとすることから通常のガラスあるいはセラミックス材料にはみられない特異的な溶融特性を示し, 融点も極めて低く, しかも融液の粘性が低いという鋳造成形に適した特異性を有している. 主としてβ-Ca (PO_3)_2の極微結晶からなり, 組成が天然歯エナメル質に近似し, 形態再現性, 機械的強度など人工歯冠に適した性質を具備している. 一方, 歯冠修復に対する患者の要望は, 咀嚼を中心とした機能回復だけにとどまらず, 審美に対する期待も高まっている. このような時期に登場した結晶化ガラスは, 生体安全性, 形態再現性, 適合性および機械的強度などの特性から前, 臼歯同一材料で行える歯冠修復材料として生体適合性の点からも注目に値するものである. そこで, 日常臨床における多くの臨床症例に対応し, 汎用性を高めるためには前, 臼歯を問わず色調再現性に優れていなければならない. 本研究では, 結晶化ガラスにおける歯冠色調の再現性について把握するために, 結晶化ガラス・クラウンの製作時に行う結晶化熱処理条件に伴う色調変化ならびに透明性について検討するとともに, さらに臨床においては種々の支台歯にクラウンを装着することから支台築造用コア材料および合着セメントの色調が結晶化ガラスの色調に及ぼす影響について検討した. 実験にはCaO-P_2O_5を主成分とするリン酸カルシウム系結晶化ガラス(九州耐火煉瓦, 備前, 以下CPCCと略す.)を用いた. ガラス原材料から10.0mm×10.0mm×1.0mmの試料を鋳造成形したのち, 結晶化熱処理最終温度を635℃, 640℃および645℃に変化させて色調の異なる試料を製作した. 試料の測色にあたっては鏡面仕上げ面を受光面とし, 分光測色計(CM-1000, ミノルタ, 大阪)を用い, 直径8mmの測色径でC光源によって背後になにも置かないで測色した. 次に, 支台築造用コア材料の色調による影響について検討するために色調の異なるコンポジットレジンおよび合金コア材料を用いて結晶化ガラスと重ね合わせた状態で測色した. さらに結晶化ガラスとコア材料をオペーク色, 白色および歯冠色の接着性レジンで合着し, 同様に測色した. なお, 表色にはCIEL^*a^*b^*によって評価し, 以下の結果を得た. 1.結晶化熱処理温度の上昇に伴って, 明度L^*および色度b^*は増大し, 色度a^*はわずかに減少した. 2.各種コア材料と結晶化ガラスの組み合わせによっていずれも明度L^*は増大し, 色度a^*は赤方向へ, 色度b^*は黄色方向へ移動した. この傾向は不透明性の高いコア材料において著明であった. 3.オペーク色セメントを用いた場合, いずれの試料間においても明度および色度に有意の差は認められなかった. また, 歯冠色セメントを用いた場合, セメントを介在させない場合との色差が小さかった. 以上の結果から, 結晶化ガラス・クラウンの歯冠色調の再現にあたっては, 結晶化熱処理温度を制御し, 支台築造材料および合着セメントの色調を考慮する必要のあることが判明した.
- 1995-08-25
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