リン酸カルシウム系結晶化ガラスの歯冠色調に関する基礎的研究
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概要
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天然歯のエナメル質に近似した微細な組織構造を有するリン酸カルシウム系結晶化ガラス(九州耐火煉瓦, 備前)は, 機械的強度および形態再現性に優れた歯冠修復材料で, 従来のメタルクラウンに匹敵する適合性を有する. 近年歯科審美の重要性が高まるなかで, 本材料の歯冠修復への汎用性をさらに高めるためには歯冠色の色調について検討する必要がある. そこで今回, 結晶化ガラス・クラウン製作時の結晶化熱処理温度条件および支台築造用コア材料と合着セメントの色調変化が結晶化ガラスの色調に及ぼす影響について分光測色計を用いて評価した. 実験には10.0×10.0×1.0mmの寸法に鋳造成形したのち結晶化熱処理最終温度を635℃, 640℃および645℃に変化させて測色用試料を製作した. 測色には分光測色計CM-1000 (ミノルタ, 大阪)を用いた. 次に, 色調の異なるコンポジットレジンおよび合金コア材料を用いて結晶化ガラスと重ね合わせた状態で測色した. さらに結晶化ガラスとコア材料をオペーク色, 白色および歯冠色の接着性レジンセメントで合着し, 同様に測色した. なお, 表色ほCIEL^*a^*b^*によって評価した. 1.結晶化熱処理温度の上昇に伴って, 明度L^*および色度b^*は増大し, 色度a^*はわずかに減少した. 2.各種コア材料と結晶化ガラスの組み合わせによっていずれも明度L^*は増大し, 色度a^*は赤方向ヘ, 色度b^*は黄色方向へ移動した. この傾向は不透明性の高いコア材料において著明であった. 3.オペーク色セメントを用いた場合, いずれの試料間においても明度および色度に有意の差は認められなかった. また, 歯冠色セメントを用いた場合, セメントを介在させない場合との色差が小さかった. 以上の結果から, 結晶化ガラス・クラウンの歯冠色調の再現にあたっては, 結晶化熱処理温度を制御し, 支台築造材料および合着セメントの色調を考慮する必要のあることが判明した.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-04-25
著者
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