実験的糖尿病ラット咀嚼粘膜コラーゲンのグリケーション
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概要
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細胞間マトリックスの線維成分であるコラーゲンは, メイラード反応により非酵素的にグリケーションを起こす. この反応過程が進行するとコラーゲン分子間にクロスリンクが形成され, 細胞環境に変化を生じることが明らかにされている. そこで, 糖代謝異常時の咀嚼粘膜 (硬口蓋粘膜および歯肉) のコラーゲンの生化学的特性を明らかにすることを目的として, ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの咀嚼粘膜を用いてコラーゲンのグリケーションをメイラード反応生成産物の消長から検索した. 反応の初期過程および後期過程での生成産物量は, それぞれフロシンおよび蛍光強度を指標として測定した. 咀嚼粘膜コラーゲンのフロシンはHPLCにより保持時間3.5〜4.0分で検出され, 紫外部吸収280nm/254nmのピーク高さの比は3.9であった. 対照群および糖尿病群のフロシン量はともに血糖値との間に相関を認めず, 大きく分散したが, その平均値は対照群に比べ糖尿病群で高かった. 咀嚼粘膜コラーゲンの蛍光強度は波長370nmで励起し, 波長440nmで測定した. 蛍光強度と血糖値との間には, 対照群では相関を認めなかったが, 糖尿病群では正の相関を認めた. 蛍光強度は対照群に比べ糖尿病群で有意に高かった. 咀嚼粘膜コラーゲンは持続的に供給される血糖によってグリケーションを起こし, とくに糖尿病下ではこの反応が加速された. この反応は複雑であり, 初期過程は可逆的で, 平衡に達すると反応はさらに後期過程へ誘導されるものと考えられる. この結果, 糖尿病下の咀嚼粘膜コラーゲンには反応後期過程の生成産物が多く蓄積し, コラーゲンのクロスリンク形成が促進されるものと推測される.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-04-25
著者
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