ヒト歯肉溝液および唾液の局所生体防御機構 : とくに分泌型IgA濃度とマウスリンパ球幼若化促進作用について
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概要
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ヒ卜の歯肉溝液と唾液の分泌型抗体濃度およびマウスリンパ球に対する幼若化促進作用への効果を測定することにより, 局所生体防御機構における口腔分泌液の役割を比較, 検討した. 分泌型IgA濃度をエンザイムイムノアッセイにより測定したところ, 唾液では169.8±76.28μg/ml, 血清では唾液の約1/30量検出されたが, 歯肉溝液では検出されなかった. 唾液と血清の両分泌型IgA間には量的な相関関係は認められなかった. また, 唾液の分泌型IgA濃度は女性に比べ男性のほうが高かったが, 血清での濃度には性差は認められなかった. リンパ球の幼若化を促進する作用を, 2系統の近文系マウスの脾細胞に対するDNA合成量 (細胞内への^3H-チミジンの取り込み) から測定した. ^3H-チミジンの取り込み量は唾液や血清添加ではほとんど増加しなかったが, 歯肉溝液添加ではDNA合成を促進させる効果のあることが確認された. DNA合成は, 無希釈から2^<-2>希釈の範囲の歯肉溝液を添加したときに著明に促進され, 歯肉溝液がリンパ球と長時間接触するほど効果は高くなった. また, 病的な歯周組織由来の歯肉溝液添加では, 健全な歯周組織由来の歯肉溝液添加よりDNA合成は高くなった. 歯肉溝液のリンパ球DNA合成促進に対する作用動態には, マウスの主要組織適合抗原系の相違によって差異が認められた. 以上のように, 歯肉溝液にはリンパ球に対する幼若化促進作用が認められ, 分泌型抗体の存在が認められないことから, 局所生体防御に対して, 歯肉溝液は唾液とは異なった役割を果たしていることが確認された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-04-25
著者
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