エナメル質表面に生じるフッ素反応生成物に関する研究
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概要
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エナメル質表面のフッ素反応生成物の動態を解明するために, フッ化物処理エナメル質の表面微細構造および表面化学分析を原子間力顕微鏡(AFM)およびX線光電子分光分析(ESCA)を用いて検索した. 着色や白斑のないヒト抜去前歯の唇面からエナメル質ディスクを作製したのち, その表面を鏡面研磨し, エナメル質試料とした. エナメル質試料表面を酸性フッ素リン酸溶液(APF, pH3.4, F濃度9,000 ppm)に, 4分間浸漬したのち, 1 Mの KOH溶液(pH13.2)および蒸留水で洗浄を行った. 各エナメル質試料表面の微細構造の観察には, AFMを用い, また, 各エナメル質試料の表面化学組成分析には, ESCAを用いた. AFM観察の結果, エナメル質試料をAPF溶液で処理すると, APF処理前とは大きく異なり, エナメル質表面の全体をおおうように, 無数の球状構造物が認められた. また, その球状構造物は, そのほとんどが均一な形態を示した. APF処理エナメル質を KOH溶液で洗浄すると, 大部分の球状構造物は消失し, エナメル質表面には, アパタイト結晶様物質が, 均一に観察された. ESCA分析結果から, APF処理エナメル質表面には, フッ素反応生成物の存在が明らかとなり, 生成されたフッ素反応生成物は, フッ化カルシウム様物質であることがわかった. これら反応生成物を KOHで洗浄すると, Fの相対濃度およびピーク位置(結合エネルギー値)の分析から, フッ素化アパタイトの存在が示唆された. 以上のAFM観察および ESCA分析結果から, APF処理エナメル質表面に生成されるフッ素反応生成物は, 球状のフッ化カルシウム様物質であることが証明され, この物質が溶解, 流失したあとのエナメル質表面は, フッ素化アパタイト結晶になることが示唆された.
- 1996-06-25
著者
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