原子間力顕微鏡下のエナメル質表面 : 微細構造およびその表面性状
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概要
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エナメル質のう蝕抵抗性や再石灰化現象を解明するには, エナメル質の表面微細構造およびその表面性状を明らかにする必要がある. そこで, 新しい原理に基づき開発され, 原子や分子を観察できる特長をもっている原子間力顕微鏡 (AFM) が, エナメル質の表面微細構造の観察に応用できるかどうかを明らかにするために, 塩酸処理エナメル質, 研磨エナメル質および唾液浸漬エナメル質について検討し, 得られた AFM 像を走査型電子顕微鏡 (SEM) 像と比較した. また, X線光電子分光 (ESCA) 分析装置により測定したエナメル質の表面化学組成と表面微細構造との関連性を調べた. 塩酸処理エナメル質表面の低倍率 AFM 像では, エナメル小柱鞘の直径は同倍率の SEM 像における値と同じく約4〜5μmであった. また, SEM では平面的にしか観察できなかった表面が, AFM によって立体的に観察できた. とくに, 小柱体部と間質部との高低差 (約3μm) が確認できた. 研磨エナメル質表面の AFM 強拡大像においては, エナメル結晶の表面分子構造はもちろん, 分子配列の規則性および格子欠陥の状態も観察できた. ESCA分析によって確認された唾液浸漬エナメル質表面の吸着唾液タンパク質はエナメル質表面の分子構造をマスクしていることが, AFM 像によって明らかとなった. 以上の各所見から, AFM を用いると, エナメル質表面を電子顕微鏡レベルから表面分子構造レベルに至るまで観察できることが証明できた. この事実は, エナメル質表面のう蝕抵抗性および再石灰化のメカニズムが AFM によって解明できる可能性のあることを示唆するものである.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-06-25
著者
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