トルクロホスメチルの Ustilago maydis に対する作用機構
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概要
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U. maydis菌を液体培地で振とう培養すると単細胞の小生子となり, 通常出芽法により増殖する.これにトルクロホスメチルを4μg/mlで処理すると, ただちに出芽が抑制され小生子数の増加が止まった.処理2時間目まで細胞分裂はまったく認められなかったが, その後小生子内に隔壁ができ, 小生子は多細胞となった.さらに培養を続けると細胞分裂が再び止まり, 一部の細胞から内容物の吐出が認められた.処理24時間後までにはほとんどの細胞が内容物を吐出した.一方, 菌体乾重の増加およびRNA生合成は本剤処理後, 2時間目では抑制されなかったが, DNAおよびタンパク質生合成は薬剤処理後初期に抑制が認められた.これは本剤が同時期に細胞分裂を阻害した結果と考えられる.内部呼吸およびグルコースを基質とする外部呼吸は, 本剤4μg/ml処理で阻害されなかった.コハク酸を基質とする外部呼吸では同処理でやや抑制が認められた.しかし同処理後ただちに小生子の増殖が影響を受けることを考慮すると, この呼吸阻害のみで本剤の抗菌性を説明することは困難であると考えられた.以上の結果から, トルクロホスメチルは, U. maydisの細胞分裂に影響を与え, とくに出芽を阻害することが明らかとなった.
- 1984-11-20
著者
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加藤 寿郎
Pesticide Research Laboratory, Takarazuka Research Center, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
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加藤 寿郎
住友化学工業株式会社農業化学品管理室
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中村 成子
Pesticides Research Laboratory, Takarazuka Research Center, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
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加藤 寿郎
Pesticide Research Laboratory Takarazuka Research Center Sumitomo Chemical Co. Ltd.
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加藤 寿郎
住友化学工業
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中村 成子
Pesticides Research Laboratory Takarazuka Research Center Sumitomo Chemical Co. Ltd.
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