トリデモルフとブチオベートの抗菌作用機作に関する比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の分生胞子をトリデモルフ10μM含有培地に培養すると, ほとんどの胞子は発芽するが, 発芽管の分岐が多くなり, 隔壁間の短縮をともない生長が抑えられた.同様の異常はブチオベート処理によっても観察された.さらに, トリデモルフはブチオベートと同じく菌体のエルゴステロール生合成を阻害したが, ステロール生合成過程における阻害点は両者間で異なっていた.エルゴステロールの生合成阻害とともに菌体内に蓄積するステロール類の分析結果から, ブチオベートはステロール骨格14位における脱メチル化を阻害し, トリデモルフは⊿^7から⊿^8への二重結合の移動(異性化)を阻害するものと考えられた.また, トリデモルフは100μMで分生胞子の発芽を阻害し, 細胞内容物の漏出を惹き起した.このような現象は低濃度(10μM)では観察されず, ステロール合成の阻害は同濃度で認められたので, トリデモルフの低濃度における高い抗菌性はむしろエルゴステロールの生合成阻害に起因するものと思われた.
- 日本農薬学会の論文
- 1980-02-20
著者
-
加藤 寿郎
Research Institute, Pesticides Division, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
-
加藤 寿郎
Takarazuka Research Center Pesticides Laboratory Sumitomo Chemical Co. Ltd.
-
加藤 寿郎
住友化学工業株式会社農業化学品研究所
-
川瀬 保夫
Research Department, Pesticides Division, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
-
正阿弥 雅子
Research Department, Pesticides Division, Sumitomo Chemical Co., Ltd.
-
川瀬 保夫
Research Department Pesticides Division Sumitomo Chemical Co. Ltd.
-
正阿弥 雅子
Research Department Pesticides Division Sumitomo Chemical Co. Ltd.
-
加藤 寿郎
住友化学工業(株)農業化学品研究所
関連論文
- ビニルトリアゾール系殺菌剤の構造活性相関
- 抗菌活性を有する 1-アシル-3-(3, 5-ジクロロフェニル)-2, 4-イミダゾリジンジオン類の定量的構造活性相関
- N-アリルアミノアセトニトリルの Fusarium oxysporum による病害防除機作 : アミノニトリルのフザリウム病防除活性(第 4 報)
- (229) 新殺菌剤S-1358による糸状菌のエルゴステロール生合成阻害 (昭和49年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- N-3-ピリジルイミドジチオカーボネート誘導体の抗菌特性
- (232) N-3-ピリジルイミドジチオカーボネート誘導体によるうどんこ病菌の形態異常
- 浸透性殺菌剤 S-7131 のキュウリでの浸透移行性
- [Hydroxy(pyridin-3-yl)methyl]phenylphosphinates および関連化合物の抗菌活性
- 除草剤の現状と将来展望
- 圃場で発生したプロシミドン耐性灰色かび病菌の性質
- 新規土壌殺菌剤リゾレックスの開発
- 殺菌剤ブチオベートの作用機構
- ステロール生合成を阻害する殺菌剤(農薬の作用点と作用機構 (1))
- トリデモルフとブチオベートの抗菌作用機作に関する比較
- プロサイミドンの灰色かび病菌に対する作用機構
- 国際シンポジウム "Internal Therapy of Plants" に出席して
- Tobacco mosaic virus-bean strain (TMV-B)の性質 : 熱変性および等電点
- オオムギ斑葉モザイクウイルスの感染によってオオムギ葉に生ずる可溶性抗原
- 住友化学工業(株)宝塚地区研究所の安全の取組み
- プロサイミドンの灰色かび病菌への可逆的結合
- Chlobenthiazone のイネいもち病への作用特性