Ferric methanearsonate (MAF) のラット体内における動態
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
メタンアルソン酸鉄(MAF;100 mg/0.5%CMC 10ml/kg=Asとして37.56 mg/kg)をラットに1回経口投与すると, 投与1日目で52%が糞中に排泄され, その後8日目までの総排泄量は58%になった.また尿中への排泄は, 投与1日目で12%で, その後わずかずつ排泄が続き, 100日目までの総排泄量は18%になった.体内に残留するヒ素の90%以上が血液に長期間残存し, 血中における半減期は114日であった.全身灌流を施したあとの臓器内ヒ素含量は一般に低い値を示したが, 脾臓および投与初期の腎臓でそれぞれ高い値を示した.また被毛への移行も認められた.臓器中の残存血液量をシアンメトヘモグロビン法で測定し, この値と残留ヒ素量とを比較検討した結果, 腎臓でヒ素の特異的な蓄積が認められた.そのほかの臓器においては, 臓器内残留ヒ素量と残存血液量との間には, 量的相関が認められた.糞, 尿, 血液, 腎臓中のヒ素をTlcで分離したところ, 三成分のヒ素化合物の存在が認められ, それぞれは, Ag-DDC法とGC-MSにより, 無機ヒ素(As^<+5>), methanearsonate, dimethylarsinateであることが確認された.糞中には大部分がmethanearsonateの形態で排泄されており, わずかにdimethylarsinateも認められた.尿への主要排泄形態はmethanearsonateでありdimethylarsinateの排泄量は少なかった.また腎臓での蓄積形態はmethanearsonateであった.血液中の主要存在形態はdimethylarsinateであり, これにくらべmethanearsonateの存在は少なかった.これらのことから, MAFは消化管内で可吸収形態のmethanearsonateに解離し, 血中に移行したのちその一部がmethylationされdimethylarsinateに成り, そこで長期間残留するものと考えられた.ヒ素のmethylationがラットにおいて行なわれていることを確認した.
- 日本農薬学会の論文
- 1978-05-20
著者
-
小田中 芳次
財団法人残留農薬研究所
-
小田中 芳次
残留研
-
樺沢 陽子
財団法人残留農薬研究所
-
高橋 和明
財団法人残留農薬研究所
-
俣野 修身
財団法人残留農薬研究所
-
後藤 真康
財団法人残留農薬研究所
-
高橋 和明
残留農薬研究所
関連論文
- 多孔性ケイソウ土とグラファイトカーボンブラック連結カラムによる残留農薬分析法
- C104 多成分農薬同時分析法の検討 : グラファイトカーボンブラックミニカラムからの溶出挙動調査
- GC法による作物中残留農薬の簡易同時分析法
- 玄米および小麦試料の残留農薬分析における抽出時の水浸漬効果
- 4.GC/MSによる多成分農薬同時測定における感度変動に関する検討(第25回農薬残留分析研究会)
- C115 充填剤を用いない溶媒排出型昇温注入法による多成分農薬の GC 分析の検討
- Topic 7 Residues in Food and the Environment
- ポリマー系吸水剤を利用した果実と野菜中の農薬の超臨界流体抽出法
- D120 殺ダニ剤フェンピロキシメートに対する酵素免疫測定法の開発 : ポリクローナル抗体の調製および測定系の開発
- D109 多成分農薬同時測定法の検討 : GC で直接測定が困難な農薬のキャピラリー電気泳動の適用について
- GC-MS 法による農薬の多成分残留分析法 : 多孔性ケイソウ土およびシリカゲルミニカラムの利用
- 硫酸亜鉛のマウスおよびラットにおける亜急性毒性試験
- 22 除草剤 3,5-ジメチル-4^1-ニトロジフェニルエーテルのラットおよびマウスに対する亜急性毒性 (第一回毒性研究会記事)
- タバコ煙吸入ハムスターにおける生体反応の定量化およびビタミンC投与の影響
- C207 水田水中の農薬の消失と気象要因との関連
- 新規除草剤シハロホップ-ブチル (DEH-112) およびその代謝物の水稲中残留分析法
- D102 多成分残留分析法における多孔性ケイソウ土カラムの適用
- ゴルフ場における農薬の表面流出および地下浸透
- ラットにおける塩化メチル水銀の慢性毒性 : 臨床検査および組織内水銀分析
- ジクロロジイソプロピルエーテルのマウスにおける 24 ヵ月慢性毒性試験
- Ferric methanearsonate (MAF) のラット体内における動態
- 9 農薬合剤の毒性相乗相加作用 第2報 (第三回毒性研究会記事)
- 3 四塩化炭素のラットにおける亜急性毒性 (第二回毒性研究会記事)
- 1 農薬合剤の毒性相乗相加作用第1報 (第二回毒性研究会記事)
- ハムスターにおけるタバコ煙吸入毒性に対する quercetin および butylated hydroxytoluene 投与の影響
- D307 LC/MS/MSによるエマメクチンの作物残留分析
- 炭素炉原子吸光法による水酸化トリシクロヘキシルスズおよび類縁化合物の直接定量法
- 数種の施用方法によるダイアジノンの土壌残留試験
- カルバリルの残留分析法
- ベノミルおよびチオファネートメチルの残留分析法
- 1-Naphthaleneacetic Acid の残留分析法
- B120 農薬の土壌表面からの揮発性を予測するための簡易試験装置の開発
- 23 Ethylenethioureaの動物体中に於ける動態と催奇形性 (第二回毒性研究会記事)
- 固相抽出法の農薬作物残留分析における利用-液液分配の代替として
- 有機ヒ素殺菌剤 iron methanearsonate と ammonium iron methanearsonate のイネ幼苗における吸収, 移行および代謝
- 有機ヒ素殺菌剤 ammonium iron methanearsonate の土壌中における代謝運命
- 有機ヒ素剤 ferric methanearsonate の土壌中における代謝運命
- 炭素炉原子吸光法による環境試料中の無機及びアルキルヒ素の定量法並びに各種共存試薬の増感及び干渉抑制効果
- Residues〔邦文〕 (第7回国際農薬化学会議(52 ICPC)特集)
- 農薬の分光学的分析法に関する研究
- 環境庁告示による残留農薬の分析方法(その 3) : 1977 年 12 月∿1978 年 9 月に告示された農薬