上部消化管大出血の治療 : 出血程度の判定規準からみた問題点 (<特集>第14回日消外総会シンポI 上部消化管大出血の治療)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
上部消化管出血の治療における大きな2本の柱は,出血による循環動態の変化に対する処置および止血法である.したがって,循環動態に変化のない程度の出血に関しては,常に原疾患の治療が優先するものであり,出血対策は出血の看視にとどまる.他方,ショックをきたす程度の出血に関しては,たとえ診察時に自然止血が得られたとしても,ショックに対する緊急の対策が必要であり,さらに,出血が継続している症例あるいは一時的な止血が得られても,出血が頻発する症例では,手術的止血法の適応の判定とともに,手術の時期の選択が重要となってくる.しかも,ショック時の出血に対する対策は,高い緊急性が要求されるものであり,出血源探索の時間的余裕は少ない.以上の事柄をふまえて,教室では従来から,上部消化管出血の出血程度の判定と,さらに,緊急手術の適応,時期の選択とを同時に行い得る「出血程度の判定規準」(以下判定規準と略す)を,上部消化管出血に適応してきた.この判定規準の利点は,ショック時に400〜1,000mlの急速輸血(30〜60分以内)を行い,輸血に反応する全身状態,循環動態の上から出血程度の判定,緊急手術の適応を同時に決定できることで,また,術前準備につながる治療を兼ねており,出血によりショックという緊急性の高い病態によく対処するものである.しかしながら,上部消化管出血をきたす疾患の種類は多く,疾患により,ショック率,緊急手術率も異なり,疾患固有の特徴,重症度の相違も大きい.とくに,最近増加の傾向にある食道静脈瘤,急性胃粘膜病変による出血症例では,出血病態に加えて,疾患固有の問題が大きく予後を左右している.教室で過去29年間に900例を超える上部消化管出血を経験したので,ショックをきたした大量出血症例を中心に,判定規準からみた疾患別の特徴を浮彫りにして,治療上の問題点を分析してみる.
- 一般社団法人日本消化器外科学会の論文
- 1979-11-01
著者
-
稲垣 芳則
東京慈恵会医科大学青戸病院外科
-
長尾 房大
東京慈恵会医科大学第2外科
-
稲垣 芳則
東京慈恵会医科大学肝胆膵外科
-
池内 準次
東京慈恵会医大第2外科
-
曽爾 一顕
東京慈恵会医科大学第2外科
-
池内 準次
東京慈恵会医科大学第2外科・共同利用研究部
-
稲垣 芳則
東京慈恵会医科大学外科
関連論文
- 慈恵医大外科2の有志による阪神大震災医療ボランティア活動報告
- 55)スポーツ選手の循環機能(第1報) : 安静時の循環動態について : 日本循環器学会第117回関東甲信越地方会
- PP-337 幽門側胃切除に脾摘を合併した場合, 胃全摘が必要か : 残胃の血流動態について
- 392 根治不能消化器癌における癌告知について : 当科におけるアンケート調査の結果から
- Bouveret's Syndrome で発症した胆石イレウスの1例
- 胆管拡張 (戸谷分類IVB) を伴った膵胆管合流異常に合併した早期胆嚢癌の1例
- 妊娠により発症した先天性胆道拡張症の2例
- 5 幽門輪近接潰瘍の組織形態学的検討(第17回日本消化器外科学会総会)
- 225 十二指腸潰瘍穿孔例の検討 : 組織形態学的所見を中心に(第15回日本消化器外科学会総会)
- 106 高位胃潰瘍の臨床所見と胃粘膜変化との関連(第11回日本消化器外科学会総会)
- 62. 先天性総胆管拡張症の外科治療の検討(第11回日本胆道外科研究会)
- 63. 閉塞性黄疸患者の術後経過から見た手術時期の検討(第8回日本胆道外科研究会)
- 39. 胆石再手術症例の検討とその予防対策(第7回日本胆道外科研究会)
- 39 切除可能であった胆道癌の肉眼的進行度と術前診断について(第18回日本消化器外科学会総会)
- 膵頭部領域癌における血管造影の臨床的意義
- 439 肝門部胆管癌の問題点(第17回日本消化器外科学会総会)
- 胆道内圧曲線描写法の意義
- 239 急性肝不全に対する治療法の検討(第13回日本消化器外科学会総会)
- 31 十二指腸乳頭部附近における諸問題 : とくに乳頭部の生理学的機構について(第12回日本消化器外科学会総会)
- 22 乳頭形成術例および内視鏡的乳頭切開術 (EPT) 例の内視鏡的検討(第12回日本消化器外科学会総会)
- VI-41. 胆道手術後合併症とその対策 とくに黄疸軽減術について(第9回日本消化器外科学会総会)
- 胆石イレウス
- 遺伝性非ポリポーシス大腸癌術後に発症した原発性小腸癌の1例
- 25. 特発性食道破裂の発生機序について : 自験7例を含む本邦報告200例の集計的観察(第42回食道疾患研究会)
- C-1. 胆道癌に対する術前照射例の検討(第17回日本胆道外科研究会)
- 8. 無胃管法アドレナリン負荷試験の血中ガストリン動態について(第17回迷切研究会)
- 1. LES の収縮運動と迷走神経関与について(第17回迷切研究会)
- 示-152 Hepatodiaphragmatic interposition の状態を呈した内ヘルニアの1治療例(第32回日本消化器外科学会総会)
- 29 ラット水浸拘束潰瘍に対する高カロリー輸液の効果(第32回日本消化器外科学会総会)
- 24 十二指腸潰瘍症における血清 Pepsinogen-I に及ぼす迷走神経切離術の影響(第32回日本消化器外科学会総会)
- 17 穿孔性十二指腸潰瘍の病態と外科治療(第32回日本消化器外科学会総会)
- 23. A_3 による Stage IV 症例に対する Bypass 手術施行方針の変遷(第41回食道疾患研究会)
- 598 十二指腸潰瘍に対する術式選択検査法の検討 : 無胃管法アドレナリン負荷試験の有用性について(第31回日本消化器外科学会総会)
- 14. 胆管結石に対する Laparoscopic lithotomy の功罪(第26回日本胆道外科研究会)
- R-28 ハーモニックスカルペル (LCS) を利用した腹腔鏡下小腸切除術(第50回日本消化器外科学会総会)
- 示I-425 膵癌におけるp53蛋白発現の検討 : 細胞増殖活性および予後との関連(第52回日本消化器外科学会総会)
- 原発性肝細胞癌に抗血管新生療法はいかに応用できるか?
- PP319062 極めてまれな側副血行路を有する食道・胃静脈瘤の一例
- PP104041 原発性肝細胞癌におけるその発癌および治療後再発抑制への戦略
- PP1132 HCV血清の血管新生作用の検討 : matrx metalloproteinaseに関して
- PP425 肝細胞癌におけるmatrix metalloproteinase networkと腫瘍血管制御
- Press through pack誤飲による回腸穿孔の1例
- PP926 医療コストを考慮した悪性胆道狭窄に対する姑息的内瘻術法の選択
- PP732 肝細胞発癌および増殖に血管新生関連因子の臨床応用可能性
- PP12 血管内皮細胞およびラット類洞内皮細胞に対するHCVseraの影響とMMP inhibitorの効果の検討
- SF16a-5 いかに肝癌に対しその増殖および発癌過程を制御するか : 抗血管新生の立場からの試み
- 浸潤性膵管癌におけるp53蛋白発現と細胞増殖活性の免疫組織学的検討
- W2-11 浸潤性膵管癌の進展における腫瘍血管新生評価の有用性 : 予後, 再発規定因子の解析から
- Sweet病に合併した膵粘液性嚢胞腺腫の1例
- P-494 膵癌におけるbFGF蛋白発現の検討 : 再発形式,予後および血管新生との関連
- P-138 血管新生抑制を中心とした肝癌への新しい戦略 : 発癌過程の血管新生の抑制を含む
- 示II-68 Harmonic Scalpelの胃癌リンパ節郭清への応用 : とくに膵温存術式における有用性
- R-93 ハーモニック・スカルペルを使用した肝切除における工夫と問題点
- 限局型原発性硬化性胆管炎の1切除例
- 悪性胆道狭窄に対する metallic stent の留置の問題点と対策 - QOLの向上をめざして -
- 示II-280 PCR法による特発性細菌性腹膜炎(SBP)診断のための実験的検討(第52回日本消化器外科学会総会)
- 示I-301 肝発癌前後および肝癌治療前後の有意義と考えられたマーカー(内因性IFN-γ, AFP isozyme)についての検討(第52回日本消化器外科学会総会)
- 232 アデノウイルスベクターを用いた無血的肝灌流法による肝細胞への遺伝子導入の有効性(第52回日本消化器外科学会総会)
- 術後輸液管理におけるRedox理論の有用性
- Bouveret's Syndrome で発症した胆石イレウスの1例
- 重症肝障害における特発性細菌性腹膜炎の発症に関する検討
- 組み替えアデノウイルスによる肝細胞への遺伝子導入における投与法に関する基礎的研究
- I-373 特発生細菌性腹膜炎の感染経路の実験的検討(第50回日本消化器外科学会総会)
- 182 切除不能悪性胆道狭窄例に対するメタリックステントによる QOL 向上における問題点(第50回日本消化器外科学会総会)
- 147 食道静脈瘤治療後の2次性胃静脈瘤の血行動態と B-RTO の効果(第49回日本消化器外科学会総会)
- Bouveret's Syndrome で発症した胆石イレウスの1例
- 5. 胆嚢癌の予後規定因子について(第24回日本胆道外科研究会)
- 453 死戦期における循環動態が移植肝に及ぼす影響について (第1報)(第43回日本消化器外科学会総会)
- 89 ラット無肝モデルの作成と無肝期における糖代謝(第40回日本消化器外科学会総会)
- 420 胃静脈瘤の成因に関する短胃静脈系の影響(第39回日本消化器外科学会総会)
- 459 胃静脈瘤の成因に関する短胃静脈系の影響(第33回日本消化器外科学会総会)
- II-242 血管新生抑制剤 (FR-118487) によるラット実験肝癌に対する効果 : 臨床応用へむけて(第48回日本消化器外科学会総会)
- 半導体レーザードップラー微小循環血流計による肝 viability の評価
- 胆道内瘻術における metallic stent の意義
- 示-3 阻血肝の viability 評価におけるレーザードップラーによる微小循環血流測定の意義(第42回日本消化器外科学会総会)
- CC-20 胃癌根治術における No.(8)(12)(13)リンパ節の廓清術式(Retromesenteric Approach)(第14回日本消化器外科学会総会)
- 668 肝門部胆管癌および進行胆嚢癌に対する肝動脈リザーバー留置による動注化学療法と放射線照射を組み合わせた治療の試み(第43回日本消化器外科学会総会)
- Kasabach-Merritt syndrome への移行が危惧された肝巨大血管腫の1治験例
- 肝癌切除後再発形式の検討
- 287 肝癌切除後3年以上長期生存症例の検討(第36回日本消化器外科学会総会)
- 80. 肝癌切除後再発形式の検討(第35回日本消化器外科学会総会)
- 370 Hassab 変法手術例の適応と予後の検討(第29回日本消化器外科学会総会)
- 123 食道静脈瘤に対する直達手術例の術後出血とその対策(第26回日本消化器外科学会総会)
- 98 門脈圧亢進症におけるI. C. G 検査と側副血行路の大きさ, 手術適応の検討(第25回日本消化器外科学会総会)
- 394 食道静脈瘤に対する食道離断術後の胃出血とその対策 (第1報)(第20回日本消化器外科学会総会)
- 279 食道静脈瘤出血例に対する内視鏡的硬化療法の手技とその治療効果について(第18回日本消化器外科学会総会)
- I-D-8. 教室における待期手術症例の検討(第29回食道疾患研究会)
- 82 胃静脈瘤の形態, 出血例の検討(第14回日本消化器外科学会総会)
- CC-13 経腹的食道離断術 : Nissen fundoplication の応用(第14回日本消化器外科学会総会)
- 88. 閉塞性黄疸に対する選択的, 胸部血管撮影法の意義(第7回日本消化器外科学会大会)
- 340 血管新生抑制剤 (FR118487) によるラット実験肝癌に対する効果(第46回日本消化器外科学会)
- 7 内視鏡的硬化療法による食道静脈瘤の治療(第24回日本消化器外科学会総会)
- 上部消化管大出血の治療 : 出血程度の判定規準からみた問題点 (第14回日消外総会シンポI 上部消化管大出血の治療)
- 21. 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(第35回食道疾患癌研究会)
- 537 食道胃噴門機能と食道静脈瘤再発よりみた, 食道静脈瘤に対する各種治療法選択の検討(第43回日本消化器外科学会総会)
- W6-7 肝硬変併存胃癌手術における手術術式の選択と術中・術後の対策(第42回日本消化器外科学会総会)
- 示-227 難治性食道静脈瘤の病態からみた選別と治療対策の検討(第40回日本消化器外科学会総会)
- W1-3 食道静脈瘤治療における内視鏡的硬化療法の適応と効果(第30回日本消化器外科学会総会)
- 554 食道静脈瘤治療における内視鏡的硬化療法の適応判定の検討(第28回日本消化器外科学会総会)
- W5-8 QOL からみた切除不能悪性胆道狭窄例に対するメタリックステントの有用性の再検討(第49回日本消化器外科学会総会)