ポケットビーチ内での防波堤建設に起因する海浜変形とその予測 : 壱岐筒城浜の例
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概要
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壱岐南東部に位置し,東側を筒城崎に,西側を岩礁により囲まれた延長約0.5kmのポケットビーチである筒城浜では,近年著しい海浜変形が生じた.本研究では,深浅測量や底質採取,さらには1966年から1999年までに撮影された6組の空中写真の分析などによって筒城浜の海浜変形の実態を分析した.1971年まではポケットピーチの北東端にある七湊漁港の防波堤は筒城崎の背後に隠れており,ポケットピーチ全体に大きな影響を及ぼすような施設規模ではなかった.その後,防波堤が岬による波の遮蔽域よりも突出して建設されたために防波堤背後の波浪が静穏化するとともに,波の回折が起きて防波堤から離れた場所で汀線が後退し,防波堤の付け根では前進した.さらに汀線の前進域では飛砂防止のための植林が行われ,砂浜が松林として固定化された.防波堤の西側隣接部で砂浜が広がるに従い,保安林区域は最大100m前進した.一方,汀線後退区域では,保安林区域と海浜の境界線の位置は変わらなかったものの,汀線が最大約37m後退したために,砂浜幅は現況で20mまで狭まった.このことが海水浴場としての海浜利用を大きく阻害することになった.汀線変化調査では,1966年までは約50m幅で沿岸方向に一様な砂浜が存在したが,1966年以降の最大汀線前進量は51m,後退量は37mに及ぶことが判明した.このような汀線変化は,防波堤が存在しない時に安定していた汀線が,防波堤が突き出たことによって別の安定形状に移ったことを表している.Hsu&Evansの式による安定汀線形状と比較し,土砂収支が満足するようにして計算した汀線形状は実測値とよい対応を示した.またHsu&Evansのモデルを拡張し3次元海浜変形予測が可能なモデルを作成し,実測値と比較した.この結果モデルにより実測海浜変形はかなりよく説明できた.
- 日本地形学連合の論文
- 2002-07-25
著者
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