インフォームド・コンセントをめぐる認識の"ズレ"が問いかけるもの
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概要
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我が国の医療の場に、インフォームド・コンセント(I.C.)という概念が導入されて10年近くになるが、医療者のパターナリズムと患者のお任せの構図は脈々と続いているような印象を受ける。そこで、現状の問題と今後の課題を考察するために、1997年7月〜9月に、市民と医療者の意識調査を行い、回答のあった市民207名と医療者111名のI.C.の理解・実践・関心と期待を分析した。市民は、医療者とのコミュニケーションの充実による双方向性の医療への期待が、殊に若年層と女性で顕著であるが、全体としては、主体的な医療参加の基盤となる自律意識は乏しい。一方、医療者、特に医師は、従来のムンテラ同様の「説明偏重」の一方向的な患者-医療者関係を当然とみなす傾向にあり、パターナリズムが健在であった。少なくとも自己決定型の医療は根付いてはいないし、また、患者と医療者双方がそのような医療の実現を、自己責任において求めているか否かも明らかではない。このような状況下で、形骸化したI.C.が一人歩きしていくことは望ましいことではない。患者中心の医療であるための一つの手段、プロセスとしてI.C.を捉え直し、患者、医療者双方のコミュニケーション能力を高めることが重要と考える。
- 日本生命倫理学会の論文
- 1999-09-13
著者
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内田 宏美
京都大学医療技術短期大学部
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太田 敦子
京都大学医療技術短期大学部看護学科
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内田 宏美
島根大学医学部看護学科
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内田 宏美
鳥取大学医学部保健学科:(現)島根大学医学部看護学科
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長尾 文
京都大学医学部付属病院
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山脇 典子
京都大学医学部付属病院
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植村 佐和子
京都府立医科大学医療短期大学部助産学専攻科
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徳山 智恵
京都大学医療技術短期大学部助産学専攻科
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水谷 奈緒子
愛知県立看護大学
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内田 宏美
島根大学医学部基礎看護学講座
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