正月料理の準備と喫食にみる伝統の継承と変化
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概要
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東京都ならびにその近郊の家庭における正月料理の準備と喫食状況の調査を実施し,今後の日本人における正月料理の意義について考察した。 1) 伝統的な正月料理の中で,雑煮とお節料理は,90%以上の高い喫食率が認められた。しかし,その一方で,日常の食生活と同様に多様化や調理の外部化が進行し,正月料理の意義の形骸化も認められた。 2) 正月料理の準備は,50%以上の家庭で,1人で担当されていた。また,その担当者は,その家庭の主婦が35才以上の場合では,主にその主婦本人であったが,35才以下の場合には,観世代へ依存する傾向が認められた。3) 複数人数で準備を担当する場合は,女性2世代,3世代で担当する比率が高く,「女性による次世代への継承」が,現代でも部分的に存続していることが示唆された。 4) また家庭の主婦の年齢層の低下に伴って夫のお節料理づくりへの寄与率が高く,近年の男性の家事行動の増加,性的役割分担の崩壊を反映していると考えられた。 5) 以上の結果より,都市部における正月料理の今後について,簡略化・外部化および形骸化の進行は避けがたいが,その一方で,「いえ」を中心に伝統に則した正月料理を志向する家庭も存続していくと予測される。
- 1999-05-20
著者
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