中国における合資企業の制度共進化 : 天津天富軟管工業有限公司の比較制度分析的ケース・スタディ
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,中国企業と日本企業とが設立した合資企業である天津天富軟管有限公司をサンプルとして選択し,比較制度分析によるインタラクティブ・アプローチの方法論を基盤にケース・スタディを試みる。その際,経営者が従業員による組織目標の実現に向けた協力を引き出すために利用可能な制度として企業文化を捉えるとともに,従業員が発言を通じて経営者を規律づけ,結果的に企業文化のイノベーションを促進しうる制度としてガバナンス・システムを把握した上で,これら制度間の共進化プロセスを経験的に裏づけるようなデータを収集する。とくにアンケート・ベースのコーディネーション・ゲームの実験によって,フォーカル・ポイントとしての企業文化の同定化を試みるとともに,組織メンバーによる行動や意思決定の調和の度合等を測定した上で,さらに特定の組織メンバーに対象を限定して彼らにインタビューを試みることによって,組織言語やシンボル等に関する彼らの心理学的解釈に立ち入る。主な分析結果として,トップとミドルの良好な関係,ポジションにとらわれないヂームワーク,口頭でのフェイス・トゥ・フェイス型のコミュニケーション,発展体としての企業,そしてゆるやかな集団主義というイメージが浮き彫りにされた。また,ハイエク的知識移転というガバナンス・システムの機能に関して,トップに対する自由な発言機会の可能性があることから,その機能の有効性が明らかになった。そして最後に,今後の研究課題として,企業を構成する制度間の新しい組合せに焦点をあてた制度共進化研究の必要性を指摘する。
- 2000-04-25
著者
関連論文
- 中国におけるクラスターの制度的多様性と進化(II)
- 現代企業のスーパーモジュラー分析序説(I)
- 中国における合資企業の制度共進化 : 天津天富軟管工業有限公司の比較制度分析的ケース・スタディ
- 日本型資本主義と比較制度アプローチ : 日本型企業システムの理解をめざして
- 「企業集団論」の問題状況 : 日本型企業システムの理解をめざして
- 中国におけるクラスターの制度的多様性と進化(I)
- 企業の性質と不完備契約論
- 制度研究の近年的発展 : 制度主義から比較制度分析へ