「企業集団論」の問題状況 : 日本型企業システムの理解をめざして
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概要
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企業目的を利潤最大化とみなしている新古典派経済学は,企業が多種多様なステイクホルダーによって構成された社会的制度であるという点に焦点をあてる代わりに,市場均衡の分析に主眼をおいてきた。本稿においては,企業をブラック・ボックスのなかに閉じ込めてしまう新古典派的視点ではなく,企業を組織として捉えるという視点からバ企業集団論」一銀行を中核として大企業によって形成されたヨコ型の企業集団である「総合的企業集団」をめぐる論議を,(1)企業集団の制度的変化,(2)企業集団の機能と逆機能,といった2つの側面を中心に理論的検討を試みる。その過程で,「企業集団論」の分析視点は4つに分類される。すなわち,(1)新古典派的に企業の集団化の目的を共同利潤最大化として把握するとともにその利潤増大機能を強調する視点,(2)メインバンクによる保険者としての役割や株式相互持ち合いを通じた株価の過大評価によってもたらされる保険機能を重視する視点,(3)集団化を通じた情報創出機能を認めるとともにその効率性を評価する視点,(4)企業が費用節約を意図して集団を形成することによって社会的費用が発生するとして企業集団の弊害をも周到に分析する視点,がそれである。本稿では「企業集団論」の吟味を通じてその問題状況,すなわち,(1)ワンセット主義問題,(2)制度的変化問題(I),(3)企業集団存在問題,(4)制度的変化問題(II),(5)利子率問題,(6)利益率問題,(7)内部的逆機能問題,(8)外部的逆機能問題,を明らかにし,可能な限り統一的な視点を提示することを主眼とする。そして「企業集団論」の意義と限界を把握した上で,主として金融・資本市場,労働市場,そして生産物市場の相互連関性を表象している日本型企業システムの本質を解明するためには「企業集団論」を越えなければならないことが結論として論じられる。
- 1995-06-25
著者
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