ヤノネカイガラムシ第1世代幼虫の発生型, 特にその双峰型が生ずる原因について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヤノネカイガラムシの越冬は雌の成虫で行なわれるが,これらの越冬世代雌虫の成熟度を見ると成熟成虫が全体の約80%をしめ,残りの約20%は未成熟成虫であった。未成熟成虫からの幼虫の発生は非常に少なく,越冬後死亡する個体が多い。したがって翌春における第1世代幼虫の発生に関与する雌成虫の主体は成熟した雌の成虫であると考えられる。成熟した雌の成虫を個体飼育して第1世代幼虫の発生消長を調査した結果,各個体とも5月中,下旬きわめて短期間の中にほぼ一斉に幼虫の発生を始め,ほとんどの個体が明りょうな2峰型の幼虫の発生を示し,途中で幼虫の発生を一度休止することが明らかとなった。第1回目の山を形成する幼虫の発生時期,幼虫発生の休止期には個体による大きな重なり合いが認められず,したがって全体としての幼虫発生消長曲線は2峰型を示した。以上のように第1世代幼虫が2峰型の発生を示す原因を明らかにするため,越冬世代雌虫について蔵卵数の消長を調査した結果,本種は卵胎生であって,卵巣内で胚子がほぼ完全に発育してから産下される。そして,蔵卵数が次第に増加し,産卵時期が近くなると,新しい卵の形成を一度停止し,産卵を始めることによって卵の形成を再開することが明らかとなった。したがって,第1世代幼虫が2峰型の発生を示すのは卵巣内における卵の形成過程に休止現象が見られ,産卵が途中で一度停止するためであると結論された。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1962-09-30
著者
関連論文
- いもち病発生の圃場調査に関する二,三の問題点
- 140 チヤノホコリダニによるナスの被害について(線虫学, 生態学, 昭和44年度 日本農学会大会分科会)
- ヤノネカイガラムシ雌成虫における卵巣の発育と幼虫発生との関係, とくにその予察への応用
- 163 ヤノネカイガラムシの生殖組織変化ならびに発生幼虫の季節的消長とその予察への応用(昭和40年度日本農学会大会分科会)
- ヤノネカイガラムシ第1世代幼虫の発生型, 特にその双峰型が生ずる原因について
- 37 トビイロウンカの卵態越冬機構2, 3について(昭和37年度日本農学会大会分科会)
- トビイロウンカの越冬に関する研究 : II 秋末期における産卵時期と卵態越冬との関係
- 130 トビイロウンカ越冬胚子の発育期(昭和36年度日本農学会大会分科会)
- トビイロウンカの越冬に関する研究 : I 自然温下における卵態越冬ならびに越冬後の発育経過
- 116 トビイロウンカの越冬について(昭和34年度日本農学会大会分科会)
- トビイロウンカの人為的卵態越冬について
- イネ品種のいもち病真性抵抗性に関する分類第II報
- イネ品種のいもち病真性抵抗性に関する分類 : 第I報