糖尿病患者における心理社会的問題と食行動の関係
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概要
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糖尿病のコントロールと食行動異常の関係を心身医学的に解析するため, 46例の糖尿病外来患者を対象として食事調査を施行した。全対象を, 予め年齢と性をマッチさせ, 以下のようにA, Bの2群に分けた。A群は心理的にほぼ安定した症例であったのに対し, B群では容易に心理葛藤の解消が得られなかったり, 性格の歪みが強く, しかも血糖コントロール困難例が多く含まれた。食事調査の方法は, 連続1週間の食事摂取量をできる限り正確に所定の用紙に記入させ, 完成後栄養士が面接してカロリー計算が可能となるようチェックした。A, B群各23例における1日平均総摂取量(M±SE)はそれぞれ1510±43,1860±75Kcalで後者が有意に大きかった。B群における1週間の1日平均最大摂取量は2300±480Kcalにも達し, 不規則な過食傾向がみられた。しかも, この群の平均夕食摂取量とそのバラツキはA群より大きく, 中には, "夜食症"類似の食生活を示す症例も認められた。さらに, B群の一般的傾向として不安水準が高く, 食品別には魚・肉類と甘味の摂取量が多いだけでなく, 間食の量と頻度も有意に高かった。一方, B群における肥満度と1週間の最大摂取カロリー, 1日摂取カロリーおよび最大摂取カロリーの変動係数, 空腹時血糖および血清総コレステロールなどの項目との間に有意の正の相関が認められた。以上の事実より, 一般に糖尿病患者では, 不安水準が高く心理的問題が多い場合ほど不規則な過食傾向が強く, これによって不安や不満の代償が得られるため, 好ましくない食習慣が形成される可能性が考えられた。また, かかる食行動様式は必然的に糖脂質代謝異常を招き, 肥満成立のメカニズムになりうることが推測された。糖尿病の患者の中には, たとえ一通りの糖尿病教育を受けたのちにも, 以上のような食行動異常が相当数存在することは, 治療上無視できない側面と考えられる。
- 1979-08-01
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