病理部門
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概要
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大学院学科目(分子細胞構造学)として昨年度に引き続き 1) molecular pathology sectionと2) epithelial-endothelial cell structure sectionの2大課題のもとに仕事を進めている。前者に関しては肺癌, 胃癌, 卵巣癌などを中心としてlaser capture microdissection, comparative genomic hybridizationを行いchromosomeにおける特定領域の増幅, 欠失を観察し薬剤耐制との関連性を検討した。胃癌においてはsignet ring cell carcinomaに絞り他の胃癌との違いと特徴を検索しつつある。また肺癌においてはsignal transduction pathway, cell cycleに関与するp53,p21,p73,Rb, c-Ablの発現と臨床検査データ, 予後との関連を検索しつつある。また肺癌cell line (poorly, moderately, well differentiated type)のDNAを用いてCGHを実行しつつある。この分野では形態形成との関連性を検討中である。一方, 血管内皮細胞の特徴づけに関してはconfocal laser scanning microscopeを用いて健常人の正常肺微小血管については一定の基盤となる標識を得ることが出来た。その結果をもとに肺癌における肺胞毛細血管内皮細胞の抗原の発現型を検索した。それによると, 内皮細胞は肺胞毛細血管型から気管支微小血管型にその表現型を転換すること, そしてその過程においてmosaic-like patternであるjuxta-alveolar microvesselの内皮細胞の表現型を経過する事実を明らかにした。これは最終的な表現型から判断すると, 肺癌の浸潤した肺胞毛細血管は, 肺動脈の末梢血管型から気管支動脈が腫瘍の栄養血管になるとの推測があり, その点では矛盾しない結果である。しかしながらmicrodissectionした組織の発現するmRNA量からみると, VEGFの発現が肺胞壁転移の癌細胞に豊富であり, その受容体のKDRがその肺胞壁で高度に発現していること, さらに肺胞毛細血管の内皮細胞核に増殖細胞核抗原が発現していることから肺胞毛細血管内皮細胞自身の分裂増生が背景にある事実を明確にした。また, 電子顕微鏡的観察によりcapillary sproutingが起きていること, 内皮細胞は同時にthrombomodulin-dominant propertyを喪失し徐々にvon Willebrand factor-dominant型に移行してゆく性格を明らかにした。癌細胞による血管新生とその内皮細胞の性格の転換を明らかにした仕事である。肺癌の血液-循環系における凝固傾向はこの表現型の転換からも説明できると思われる。また, 内皮細胞に存在する抗凝固因子thrombomodulinが消失すると同時に内皮細胞の増生反応が発生するメカニズムにも注目している。thrombomodulinはthrombinの受容体としての機能を持つ。一方thrombinの受容体としては少なくとも, もう一つありprotease activated receptor (PAR)といわれる。この受容体PARの活性化の過程でthrombomodulinが何らかの機能的干渉作用をする可能性があり, 現在その点で検索中である。内皮細胞は病変の発現とともに積極的な作用をしている可能性があり病因論の設定上重要なポイントである。
- 日本医科大学の論文
- 2001-03-25
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