病理部門
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概要
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1)分子病理学部門としての開設 a)過去1年間空席となっていた病理部門責任者が平成9年6月1日付で決定した。清水一技術主査(電子顕微鏡, 細胞培養, in situ hybridization)と枝川聖子技術主査補(免疫組織化学, BALなどコンピューター・データ解析)の3人で活動を開始した。7月にガジザデ・モハマッド(通称ガジ先生)が中央電子顕微鏡室から講師として着任した。ガジ先生はイランの医科大学卒業後政府給付留学生として来日し, 徳島大学大学院(泌尿器科学)を修了し, 本学中央電子顕微鏡室に籍を移しシカゴ大学留学を通して基礎病理学の研究(特に分子病理学領域)を続け現在に至っている。12月には第二病院病理部時代から共同研究中(肺癌における微小血管内皮細胞の動態など)である中国出身の金恩京先生が助手として加わった。彼ら2人は日本語が上手で意思の伝達, ディスカッションに困ることは全くない。また, 明るく前向きな性格なので楽しく共同作業のできる人たちである。b)老人病研究所病理部門は大学院医学研究科委員会において大学院の講座として認められ, 分子病理学部門Department of Molecular Pathologyとして正式に発足した。したがって平成10年4月から大学院博士課程の学生を受け入れることが可能となった。2)平成9年度の研究内容と将来構想 この数年来, 病院病理部で呼吸器の細胞診(気管支肺胞洗浄法, BAL)と癌組織の超微形態学的解析に従事してきた。前者は経気道的肺生検(TBLB)では得られない診断学的価値を有し, 世界的に常用されているBAL法とは異なり独自に開発した方法である。第二病院放射線科の佐藤雅史部長をはじめ, 第4内科の工藤翔二教授その他付属各病院の病理部の各部長, 技師諸兄のお骨折りを得て現在ではその分析総数は1050例になった。そのデータをまとめて日本医大方式として国内外の学会で発表しつつある。近年, 非喫煙者のとくに中年女性における肺癌の増加が注目される。この癌組織を分析しつつ, この数年来2種類の呼吸器細胞の特徴を電子顕微鏡的, 免疫組織学的側面から明らかにした。a) Bronchiolar cuboidal cellのcell lineageとしての注目点 気道末端に存在するbronchiolar cuboidal cell(未分化立方上皮細胞)として提唱しているが, その増生能力と反応様式は気道の基底細胞, クララ細胞, II型肺胞上皮細胞に類似する。また, 肺の腺癌の前駆細胞(progenitor or stem cell)としての可能性もでてきた。しかしこの細胞の他3者との細胞生物学的関連性は全く不明でしかも研究されていない。将来この細胞のcell lineageとしての独自性を明確にする必要がある。b) Fenestrated capillaryの肺胞毛細血管への出現 再生された肺胞毛細血管内皮細胞は, しばしば気管支動脈系微小血管内皮細胞の特徴(fenestrated capillary)を備えており, この内皮と本来の肺動脈系毛細血管内皮細胞(nonfenestrated capillary)との関連性が不明である。われわれの研究結果によれば, どうやら両血管系を結ぶbronchopulmonary anastomosisを介して内皮細胞が増生, 遊走, 接着, 分化に至るものと推測された。このステップを誘導する因子として内皮細胞成長因子とその受容体の出現がある。この免疫組織学的領域での検索は昨年後半に開始して最終段階に至った。現在in situ hybridization法を実践中である。分子病理学的解析をするに当たり, 組織標本上で可能な, in situ hybridization法の応用が最も急がれる。次に分子生物学的手法で細胞の抜本的特徴の解明に向かいたい。
- 日本医科大学の論文
- 1998-03-25
著者
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