生化学部門
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概要
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研究課題 1)アポトーシス(細胞自滅)の分子機構 2)アルツハイマー病に対するミトコンドリアの関与 3)脳変性疾患における神経細胞死に関与する遺伝子の同定 4)ミトコンドリア病の発症機序と治療法の開発 5)ミトコンドリア遺伝子の体細胞変異と老化研究の背景, 経緯, 結果とその意義生化学部門(大学院細胞生物学科目)研究室は, 長期的には, 分子レベルで老化現象を解明し, 老人病の解明と対策を可能にするのが研究目標である。中期的には, 「細胞死のメカニズムの解明」, 「神経細胞死が進行するアルツハイマー病などの脳変性疾患の解明」, 「ミトコンドリアゲノムの体細胞変異の意義とメカニズム」などの解明を目的に研究を進めている。いずれのテーマもミトコンドリア機能を重視しながら研究を進めているところに特徴があり, それぞれのテーマの接点でもある。 a)ミトコンドリアゲノムの変異解析では, 9年来の問題が解決できるような大きな発展があった。1990年に太田らをはじめとしていくつかのグループによってミトコンドリア脳筋症の原因遺伝子が同定され, それはミトコンドリアtRNA遺伝子の点変異であった。しかしながら, ミトコンドリアtRNA遺伝子の点変異によってどのようにミトコンドリア脳筋症が発症するのかが永らく謎であった。その答えはtRNAのアンチコドンの第一文字の塩基が修飾されなくなるということで, 翻訳時に異常蛋白が合成されるということがわかった。この発見はごくわずかなミトコンドリアゲノムのtRNA遺伝子変異によってもミトコンドリア変異蛋白が蓄積しうることを示したものであり, 老化研究にとっても重要な発見であった。 b)アルツハイマー病の解明には二つの面からアプローチされた。ひき続き新規の危険因子を遺伝子解析から進められ, 新たな危険因子を発見することができた。もうひとつのアプローチは昨年度に発見された危険因子のミトコンドリア蛋白DLST(ジヒドロリポアミドサクシニル転移酵素)解析である。1997年にDLST遺伝子がアルツハイマー病の危険因子であることを報告したが, スウェーデンのグループによって追試された。遺伝子多型によって分類されたDLST遺伝子型でアルツハイマー病と相関関係がある遺伝子型をもつ健常人は, 血糖濃度が高い, 肝細胞の障害, 心拍排出量の低下など全身にわたって機能低下が観察された。また, DLST遺伝子ではイントロンのなかばから転写開始することが発見され, アルツハイマー病の発症機序との関連も示唆された。 c)細胞死のメカニズムに関しては, ミトコンドリア蛋白アポトーシス誘導因子Baxの解析が進んだ。Baxの致死作用にはATP合成酵素の活性が必須であることを大腸菌を用いた実験によって明らかにすることができた。また, Bax蛋白のC末端半分だけでもアポトーシスを誘因する能力があることをより明確にすることができた。このアポトーシス誘導の経路は従来いわれてきた経路とは別にもうひとつあることが判明した。また, アポトーシスを抑制する因子であるBcl-xLに部位特異的変異を導入して, 一段とアポトーシス抑制活性を向上させた人工的蛋白の作製に成功した。
- 1999-03-25
著者
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