生化学部門
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概要
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1)生化学部門は, 本学大学院の「細胞生物学」学科目研究室であり, 英語ではDepartment of Biochemistry and Cell Biologyの名称を用いている。本学には医学部に生化学講座が2講座あり, 私たちの研究室が最も細胞生物学的色彩が強いため, 研究室の特徴を的確に言い表す「細胞生物学」研究室という名称も同時に用いることにした。細胞生物学は, 細胞の仕組み, 成り立ちと動きを分子レベルで解明する学問である。さらに高次の組織, 個体への反映を細胞の仕組み, 成り立ち, 動きから解明する。したがって, 細胞だけにとらわれず分子から個体までを研究対象とする。2)生化学部門(大学院細胞生物学科目)研究室は, 長期的には, 分子レベルで老化現象を解明し, 老人病の解明と対策を可能にするのが研究目標である。中期的には, 「細胞死のメカニズムの解明」, 「神経細胞死が進行するアルツハイマー病などの脳変性疾患の解明」, 「ミトコンドリアゲノムの体細胞変異の意義とメカニズム」の研究を中心に行っている。いずれのテーマもミトコンドリア機能を重視しながら研究を進めているところに特徴があり, それぞれのテーマの接点でもある。a)細胞死のメカニズムに関しては, ミトコンドリア蛋白アポトーシス誘導因子Baxの立体構造が推定され, Baxが哺乳類細胞にアポトーシスを誘導するだけでなく, 細菌にまで死をひきおこすこと, 活性酸素がその機能にかかわっていることを明らかにした。ミトコンドリアの電子伝達系cytochrome c結合蛋白であるHinge蛋白を過剰発現させることによってアポトーシスが引き起こされることを証明し, cytochrome cがミトコンドリアから遊離することが死の引き金になることを確認し, その遊離機構解明に寄与した。b)アルツハイマー病はミトコンドリア機能異常の観点から遺伝学的なassociation studyが行われた。α-ケトグルタル酸脱水素酵素の中心酵素DLST (dihydrolipoamide succinyltransferase)の異常という観点から調べ, DLSTの特定の遺伝子型がアルツハイマー病と相関関係があることを発見した。本年度は朝日, 毎日, 読売の3紙に「アルツハイマー病の新しい危険因子の発見」と大きく報じられた。さらに, DLST遺伝子がアルツハイマー病に寄与する機構を明らかにしようと努めている。DLST蛋白はミトコンドリアに局在するはずであるが, 細胞質膜に存在するDLST遺伝子由来の異常蛋白質が検出されており, アルツハイマー病との関連を調べている。c)ミトコンドリアゲノム研究では, 極くわずかな変異を効率よく調べる方法を樹立した。PCRのプライマーの3'末端のミスマッチを利用する方法で, 大量の試料を同時に処理するシステムを確立した。老化とミトコンドリア遺伝子の体細胞変異の関連を本格的に研究できるシステムができあがった。d)また, 眼科との共同研究では日本人の家族性緑内障遺伝子変異が同定され, 読売新聞に報じられた。早老症の原因遺伝子と早老症の関連の研究も手がけている。以上のように遺伝学, 遺伝子操作, 細胞培養, 生化学, 蛋白化学, 免疫学的手法, 物理化学的手法などあらゆる手法を駆使して, 研究にあたっている。
- 1998-03-25
著者
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