樹木の栄養と施肥に関する研究(第1報) : 林地に栽植した造林用樹木苗木の生育,肥料養分のとりこみにたいする施肥の影響と林地土壌中における施肥養分の挙動について。
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概要
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[Author abstract]The effects of fertilizing on Japan cedars (Cryptomeria japanica) and loblolly pine (Pinus taeda) were studied. On basis of the present experimental data, there should be no doubt that, by means of application of NPK compound fertilizers to transplantation of wood seedlings, it is possible very considerably to increase the growth of wood seedlings. Furthermore, the experiments clearly show that the fertilizing effects of large sized solid fertilizers snch as a tablet and spherical shapes is exceedingly high as compared with powdered fertilizers. In fertilizer placement, the effects of dressing in forest soil surface was some inferior to hollow application or ring application of fertilizers. In generally, the fertilizing on plantation of wood seedlings were increased significantly the prodnction of dry matter of trees. Under the conditions of this experiments, the absorption coefficients of nutrients on wood plant were calculated. Average values of absorption coefficient in percentage for N-P_2O_5-K_2O nutrients in fertilizer used to transplanting of wood seedlings indicate the number of 8.4-3.5-5.2, respectively. The sitnation of Japan forestry today requires, with imperative necessity, as rapid as possible an increase in wood production. The fertilizing in plantation of wood seedlings was show that fasilitate a rapid rate of felling and increase a profitableness of forestry.[総括]本報においては杉及びテーダ松の新植に際して施用した各種の試作複合肥料の肥効性につきその肥料形態と施肥方法の影響を検した。(1)造林樹木の生長は樹種によって異るが一般にそれら苗木の林地えの新植に際しての施肥(元肥)は樹幹の伸長並びに直径生長を促進する。かくして植林地における新植苗木に対する肥料の施用は根張りをよくして根の占める空間容積を拡大し地上部の生育を旺盛ならしめる。しかして樹幹の伸長ならびに直径生長量の肥料形態、施肥方法による相違は明かでなかった。(2)肥料養分の吸収により樹体の乾物重生長量の増大が著しく促進せられる。かくして林地における施肥の効果は樹高、直径におけるよりも樹体乾物重の増加において極めて明瞭にみとめられる。なお樹体の乾物重の増加は、Tablet又は粒状肥料の施用は粉状肥料にまさり又施肥量が多い場合において著明である。(3)樹体中のN, P_2O_5, K_2Oの各濃度については一般に N > K_2O > P_2O_5 の順である。樹体の部位における養分濃度は枝幹部、根部におけるより葉部において著しく大で殊にNにおいて顕著である。なおこれらの養分濃度は施肥により一般に上昇する傾向がみられる。(4)養分の吸収率は肥料の形態、成分比率、施肥方法によって相違するが一般にTablet状又は球状に成型した所謂大型固形肥料又は粒状肥料はいずれもその粉状肥料よりも吸収率高く肥効性のすぐれていることがみとめられる。この養分の吸収率は植林木の生育年限によって異なるであらうが本実験 (移植後8ケ月間の生育)においてはその値は平均的にみてN, 8.4%, P_2O_5, 3.5%, K_2O, 5.2%でその順位は N > K_2O > P_2O_5である。かくして一般に林木の養分吸収率はいずれも甚だしく低位である。以上の如く土壌中における施肥養分の一部は植物に利用せられるが残余の大部分は雨水により流亡し、また土壌に吸着固定せられて難溶化するものと考える。この土壌固定による植物養分の不溶化はP_2O_5とK_2O成分において著しく、肥料形態については粉状物の施用は粒状やTablet状に比して土壌中における養分の固定を増大せしめ、またこれら肥料養分の土壌による固定化は施肥方法によっても相違することが示唆せられた。(5)Tablet又は球状の固形複合肥料を施肥した場合には、土壌中に不溶解性の物質を残留する。かかる肥料形骸物質の主体は石膏で肥料成分は3成分ともそれぞれ1~2%を残してほとんど溶出していることがみとめられた。なお石膏は複合肥料製造中に形成せられ肥料構成分として含まれたものであると考える。又残存肥料成分は、石膏と化合物を作り或は難溶性化合物の形態で存在するものと思われる。(6)林地用肥料としては施用上の利便から粉状又は粒状肥料よりも固形状複合肥料が望ましく又含有成分は出来るだけ高濃度で、しかも肥効に持続性(遅、複効性肥料)があり特にN成分の高いものが好ましい。なお林地用肥料としては酸性よりも中性又は中性に近いものが合理的である。(7)本研究の範囲においては施肥量の多い方がその少ない場合に比して樹体における吸収率を高め乾物重を増大する。したがって林木に対しても至適施肥量のあることが示唆せられる。(8)樹高生長や根元直径の測定から植穴施肥、環状施肥と表面撒布法における肥効性に明白な相違をみとめることは困難であるが、一般に表面撒布は環状施肥、植穴施肥方法にくらべて肥効的に遜色あるものと推定せられる。即ち表面撒布においては養分は雑草によって奪取せられやすく又土壌表層部における硝化作用によりN(特にNH_4-N)の溶脱を容易ならしめ、P_2O_5に関してはその位置的肥効性は極めて低いためにその大部分は表層部の施肥位置で土壌に吸着固定せられて下層えの移行がほとんどおこなわれないためであると考える。かくして植林地における施肥は出来るだけ深く根に接近して施すのか有利であると考える。この点において植穴施肥法は肥効的見地においてすぐれているものと推定せられる。(9)林地肥培の効果は肥料の成分比、形態、施肥方法のはかに造林地の土壌条件、標高、傾斜、方位、気象環境等にもとずく自然条件や林地における成育空間によって異なるものと考える。一般に植林地における施肥によって養分の補給による生長促進、材質の増大に対する直接的効果のほか、ウツ閉促進による土壌侵蝕の軽減、落葉還元量の増大による土壌の改善ならびに林地土壌に対する養分の天然供給量の増進、下草刈費の節減等の間接的効果を期待することが出来る。(10)苗床における稚苗に対する施肥については従来一般林業家により実施せられているが植林地における施肥は伐期の短縮、森林生産性の向上に寄与するところ極めて大きく今後の林業経営における重要な研究課題であると考える。(11)本研究は苗木の新値後短期間内における樹木の伸長、肥大ならびに乾物の生産に対する施肥の効果を検したのであるが、さらに追肥の影響や施肥後長期にわたる生長の推移と施肥の材質に及ぼす影響等に関しては将来の研究にまたねばならない。
- 1971-03-15
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