Mason & Dixon : 英国植民地時代における二項対立の構図
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概要
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Thomas Pynchonの最新作Mason & Dixon (1997)には,作者がこれまで一貫して描いてきた西欧近代文化に見られる二項対立的な構図が踏襲されている。それはGravit's Rainbowに登場する'They'システムと'the Counterforce'の関係が最も明確に具現しているが,本作品でも基本的には同じ構図が見られる。'They'システムを表す側は,世界覇権をかけた西欧列強の植民地帝国であり,そこで利潤を追求する資本主義企業である。これらは奴隷制という非人間的な制度を採用する一方でライン設定という人工的秩序で人々を管理・統制してきた。その理性・合理主義偏重の精神は,18世紀の支配的精神の中に見いだしうる。カウンターフォース的勢力は,体制派の権力に逆らって自由を維持しようとする様々なグループの中に見られると同時に,作品に頻出する魔法,神秘,驚異,超自然現象といったマジカル・リアリズム的要素の中に現れている。これらの非合理的,非理性的要素は,理性が支配する人間の客観的意識とは対照をなす主観的意識の営みと深く関わっており,人間の創造性や独創性や卓越性を生む大切な要素である。拙論では,これら二項対立の構図と相互関係の意味するところを考察する。
- 富山大学の論文
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