ピンチョンにおけるポストモダニズムのカウンターフォース
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概要
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ポストモダンの時代は,規範,言説,象徴,記号,コードといった社会を作る諸々の文化装置が,これまでのように確固とした指示作用をせず,その人為的構築物としての側面が意識されるようになった時代だ。本論では,ポストモダニズムの旗手Thomas Pynchonの代表作Gravity's Rainbowを中心に,人為的構築物としての西欧近代文化,特に諸規範を生み出した権力作用について考察する。諸規範を作る'They'システムの価値体系は,テクノロジー,産業資本主義,キリスト教的道徳が一体化した理念に収斂される。それはイデオロギーの網の目によって構造主義的に人間の思考に影響を与えており,人々は必然的,普遍的なものとしてこうした価値体系を受けとめている。しかし,ポストモダニズム的意識から文化装置を再考する時,その一義的拘束性,人工性,恣意性,他律性などの弊害が露呈される。Pynchonは実験的手法を駆使して,文化装置に様々な揺さぶりをかけ,脱構築することで,こうした弊害からの脱出方法を読者に提示している。拙論では,この過程も考察することで,文化のあるべき姿について検討してみる。
- 富山大学の論文
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