極東ロシアにおける資本主義への道
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概要
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ソビエト崩壊後,ロシアは大混乱を続けている。現存した社会主義から資本主義への転換は歴史上,始めて経験する過程である。その実態は,どうか。小論の"舞台"をロシアの後進地域である極東ロシアに限定し,資本主義化の現状をみるとともに,「再生」の道を探った。事態は深刻であり,絶対的窮乏化が全地域を覆っており,少数民族はこのままでは絶滅の危機に瀕している。転換が,なぜ,このような結果になったのか。いわゆるショック療法の"誤診"である。当初,「足を水底につけながらルビコン河を進む」というgradualism (漸進主義),それは市場経済化へのテンポと"純度"を意味していたわけだが,その折衷的手法が退けられた。それに代わってきわめて政治的に,新古典派経済学に主導されたbig bang(急進主義)が強行された。その結果,ものの見事にソビエト社会主義は"大爆発"で瓦壊したが,新古典派も世紀の実験に失敗したことによって倫理的に命脈を尽きた。問題のひとつは移行問題に長年,"格闘"してきたKornaiがナゼ,「一気に全面的にパッケージで」資本主義革命を主張したかであり,「小国」ハンガリーですら受けいれられなかった手法が,「超大国」ロシアで通用する見込みすらなかったことを分析,Kornai理論の限界を指摘した。それではロシア「再生」の道筋は何か,暗中模索の現状にあるわけだが,再度,見直されねばならないのは,Kornaiが,かつて提起した「計画と市場の結合」である。それは人類二千年の歴史のなかでトライ・アンド・エラーで,追い求められてきたものである。極東ロシアの救済だけでなく,計画と市場の黄金点の発見こそが資源制約,環境制約のなかにある現代資本主義の課題でもあるのだ。
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