集落型稲作生産組織の経済構造に関する研究 : 岐阜県海津郡平田町の事例分析
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概要
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集落型生産組織とは,農業集落を範囲とし,集落の圧倒的多数者でもって組織され,もっぱら集落内での基幹農作業の受委託を行う組織である。その典型的事例である岐阜県海津郡平田町土倉・高田両集落(生産組織)を対象として昭和56-59年において実施した生産組織調査の結果は,次のとおりである。(1)集落型生産組織の設立は,直接には補助事業対応を契機としたものであり,組織類型では農業機械の共同利用組織から農作業の受託組織へと再編されている。(2)生産組織のオペレーターは,約2戸に1人の割合で選出され,「反当平等出役(土倉)」ないしは「平均出役(高田)」を行っている。オペレーター収入は,農家所得はいうまでもなく,農業所得のごく一部をなすにすぎない。(3)町費補助金の役人をはじめ,行政・農協が集落型生産組織を指導・援助している。しかし一般的にいえば生産組織は,今日,米価の低迷,生産資材価格の高騰,作業実績の伸び悩み(水田利用再編対策)等のなかで,組合収支,オペレーター要員の確保,役員負担,作業委託農家の経営収益性の悪化等々の諸問題に逢着している。(4)当該地域では,さしあたり集落型生産組織以外の方式での地域農業の組織化は展望しがたく,この方式を踏襲した生産組織の再編強化が今後の基本方向である。また新たな再編の方向は,より一層の補助金待望や既存の農政への迎合ではなく,農業集落の構造の見直しや農業を巡る諸矛盾・諸困難の直視,その打破の方向でしかないと考えられる。
- 岐阜大学の論文
- 1984-12-15
著者
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