企業の指導原理と管理会計の理念 (山口操教授退任記念号)
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概要
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管理会計が技術であるとすれば,これを導く理念がまず問われなければならない。理念なき技術や誤った理念に支配される技術は,世に不幸な結果を招きうるからである。管理会計を導くべき理念は,管理会計が機能する場である企業に対する理念であり,それは企業をどう見るか,企業はどうあるべきものと考えるかという企業についての根本的な見方,考え方,すなわちまさに企業観にほかならない。私は,企業を三重の場と捉える。すなわち,企業は「経済活動の遂行の場」であり,また「人間の生活の場」であり,さらに「社会の利害の交錯する場」であるとみる。このような見方に立てば,企業観は、利潤観,人間観(従業員観),および社会観の三つによって支えられることになる。すなわち,経済活動の遂行による利益をどう見るか,企業はそこに働き生活する人々をどう遇すべきものとするか,そして企業は社会とどう関わり合うべきものと考えるかである。私は,経済活動の遂行の場としての企業を指導する原理は「経済性」-「効率」であり,また人間の生活の場としての企業の指導原理は「人間性」-「人間の尊厳」であり,さらに社会の利害の交錯する場たる企業のそれは「社会性」-「公正」であると捉える。しかも,企業は,第一に,企業を取り巻く利害関係集団に公正に接し,とりわけ社会に有用な財貨サービスを提供すべき歴史的使命を担うものとして顧客をまず念頭に置き,第二に,企業に働き生活する人々をたんなる労働力の提供者としてではなくまさに人間として遇すれば,第三に,それらの結果として経済活動は順調に効率よく機能してそこにおのずから利益がもたらされるはずであると考える。なににしても,管理会計に関わる人々は,すべからくまず管理会計に対する自らの理念を改めて見つめ直すべきことを,本稿は訴える。
- 慶應義塾大学の論文
- 2001-08-25
著者
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