再分配政策形成における利益集団と未組織納税者の役割 : 再分配政策の政治経済学
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概要
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この研究では,経済学における所得再分配政策の取り扱いを概観して,所得再分配政策が存在する理由,およびこの政策に変化をもたらす要因を考える。まず規範分析としての新厚生経済学,この体系のなかで重要な役割をはたす補償原理を批判的に検討することにより,分配問題が,経済学者の分析から無視されてきた経緯を考察する。つぎに,再分配政策の「事実解明的(positive)アプローチ」として,Downs (1957), Olson(1965), Becker(1985)の延長線上にあるDenzau and Munger (1986)モデルを拡張する。拡張の目的は,「所得の不平等分配を緩和する再分配政策のみならず,市場の失敗の修正も,政権の安定・強化につながるから政府は実行するのである」という常識的な感覚を表すモデルを作りたいためである。そしてこのモデルにもとづいて,再分配の政策形成過程で,組織化されていない納税者,すなわち未組織納税者の利益はどのように保証されており,それを撹乱する要因は何かということを考察する。そして最後に,再分配政策と思想との関係について,経済決定論的な仮説を提示する。すなわち,再分配政策を動かすのは時代時代に常識として受け入れられている経済政策思想であり,経済成長率が鈍化した時を契機として,時代は,経済成長を達成してくれることへの期待を込めて,古い思想から新しい思想に取り替える。
- 2000-02-25
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