夏期日本語教育コース再考 : プレースメントテスト及びプロダクション・テストの分析から
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概要
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本稿の目的は,国際基督教大学1994年度夏期日本語教育(SCJL)におけるPre-Intermediate(PI)コース及び漢字関係コースについて分析し,SCJLのコース・カリキュラムを再考することである。SCJLには例年,本国で初級文法の学習は終えているがその定着が悪く,かつ四技能のバランスがとれていないPIレベルの学習者が多く集まる。また,SCJLは歴史的には非漢字圏の学習者が中心であったが,近年漢字圈の学習者も増えてきている。しかし,このような点に対してまだ十分対応できていないのが現状である。そこで,本稿では,プレースメント・テストの下位テストであるComprehensive Test (COMP:読解・文法テスト)及びプロダクション・テスト(絵を使用した文生成テスト)のデータの比較を行い,PIレベルについて分析を行った。その結果,PIレベルではCOMPの得点に比べ文生成力が低く,四技能の能力がアンバランスであることが明らかになった。また,プレースメント・テストを漢字圏・非漢字圈学習者別に分析したが,PIレベルで両者の差が最も大きかった。一方,他の日本語能力に比べ漢字力が低い学習者を対象とした漢字関係コースでは,PIレベルではバランスの悪さを克服できないようであったが,上級レベルでは目標が明確になりよい結果をもたらした。以上の考察により,今後SCJLにおいて,PIコースでは不得手な技能を中心としたクラス編成の検討,また漢字コースのみならず全コースを通して漢字圏・非漢字圏という点からの検討が必要だと思われる。
- 国際基督教大学の論文
- 1995-03-31
著者
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