テスト評価、均質的文化、独創性養成 : 教育・研究における選抜法について考える
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概要
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個性化、多様化と創造性とが深く関わり合っている資質であることは、すでに多くの人びとの述べているところであるが、本稿ではその定量的裏付けに向けて少し考えてみる。 その第一歩として、現在のテスト管理社会において、個人の能力を評価しているシステムを取りあげてみると、そうしたテストの連続で選抜されてきた集団では、質の向上とともに、時がたつにつれて、どうやら集団の均質化、平均化が起こるらしいことが推論される。 すなわち、テストによる管理の度合いと、それを実施している社会の持つ文化の型とには、ある種の相関が存在し、創造性の基となる、個性の自由な伸展を望むのなら、できるだけ均一化を引き起こさないような、テスト結果の総合評価法を考えていかなくてはならないようである。 いま広く使われているのは、各テストの得点の単純和をもって順位をつける評価法であるが、この方法には、計算がらくであるという以外に、大した根拠がない。むしろ各能力の得点を成分とし、その合成ベクトルを総合能力として評価するほうが自然で、かつ多様性の評価にも、より良く適合するようである。 多様化を考えるときに、よく心配されるのが、全体のレベルの低下ということであるが、このレベルという考え方は、実は一つの数値に頼った、画一化の概念である。したがって、多様化、個性化を必要とするこれからの情報社会においては、目標達成の基準として、全体のレベルという考えに代わるものを見つけ出さなくてはならない。 伝統的に基礎研究に多大の重み付けをしていた米国が、国際的環境の変化に押されて、実利主義へと向かいつつあるいま、日本がその逆向きの努力を余儀なくされていることには、なかなかに意味深長なものがある。
- 国立情報学研究所の論文
- 1990-09-30
著者
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