木材の収縮膨脹に関する異方性の原因について(第 15 報) : 誘電性と異方的収縮 (2)
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概要
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(1) スギ-A, -B, モミ, カラマツの4供試材について, 春材および分離しない春秋材のマツチ軸木状の試験体(カラマツはほかに秋材試験体, Fig. 1参照)多数宛をもつ同一試料に関して, 電極板(Fig. 5)間において試料の占める容積割合に対する誘電率および誘電損失の関係(Fig. 2,3)にもとづいて, 春材, 春秋材の切線および半径誘電率(誘電損失)を測定し(測定装置についてFig. 4,6参照), これらの結果を用い秋材のそれらを(1)式によつて決定した。(2) 前報で予期したように, 春材と秋材はともに夫々の横断面において異方的誘電性を示し, 春材はその半径誘電率(誘電損失)が切線誘電率(誘電損失)よりも大きく(異方度 : 1.3∿1.5), 秋材はその逆(異方度 : 0.7∿0.9_5)である(Table 2)。しかも誘電率と誘電損失はTable 4に示すように横断面における異方度において略等しい。なお, 前報における春材, 秋材の誘電性に関する考察の根拠の妥当性が立証された。(3) 既報の春材, 秋材仮導管の大きさ, 膜厚さ, 切線および半径膜の横断面における収縮等の実験値を用い, (2)式に従つて求めた春材, 秋材の細胞膜の収縮積分値はTable 3の通りである。(4) 春材, 秋材の横断面における誘電性に関する値と収縮積分値とは, Fig. 8∿10に示すように対応する絶対値と異方度について, かなり高度な関連性を示す。これは春材, 秋材の異方的収縮に関して, 細胞膜にある活性水酸基の分布, 材の径切両方向における細胞膜の厚さの積分値の相異等が重要な要因であることを示すものと思われる。また, 誘電性に関する値に対する収縮の関係(Fig. 11∿13)とFig. 8∿10に示した関係との夫々の相異によつて, 異方的収縮の要因に細胞膜の厚さの積分値以外の顕微鏡的構造における二, 三のものが附加されると考える。
- 1958-08-01
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