菅季治 : 「文芸的心理学への試み」序説(その4)
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概要
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菅の「人生の論理」の執筆は,1943年9月,戦時である。本論では,菅の論述のもとになっている,キエルケゴールならびにアミエルに焦点をあて,その整理と解釈を試みた。菅がうけたキエルケゴールやアミエルの影響についは,これまでも指摘があったが,誤解にもとづくと思われるものがある。これまでみてきたことからあきらかなように,菅の,豊かな感性のうえに築かれた,哲学的土台は,戦時にあって人間的価値をもった教養をしめていて,その心理の論述も,冷静な観察の眼を生かした考察となっている。とりわけ,絶対的,一元的な哲学の伝統のなかで,他者との自由な,人間的な社交と交際,それによるさまざまな問題の解決につなげていくことを見通した「相互承認論」の展開は,じつにあらたな人間関係の転換点をしめしている。すべての人が「自由な人」になることが,人間の根本のありかただというのが,菅の哲学の基本である。「自他」「相互承認論」を基礎づけているのが,この人間観であり,その原点となっているのが,人間を縛するものからの自由ということである。その批判のキーワードは,「世間」である。戦時の全活全般が,「他者抹消」(戦時がこの死生観のうえに築かれていたし,哲学がそうであったことに注目したい)が公の論理とされていただけに,菅がいまわれわれによびかけていることの意味は,時代を超えて重い。
- 北海道教育大学の論文
- 1998-02-10
著者
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