発生途上の口腔・顔面諸器官に見られるアポトーシス
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概要
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ネクローシスに対してアポトーシス(apoptosis)という概念が提唱され, 様々な分野で研究が進んでいる。典型的なアポトーシスの形態変化は核のピクノーシスと細胞質の凝集から始まる。次に, 隣接する正常細胞との接触が失われ, 細胞が断片化し, 無定形な物質を含む小体(apoptoticbody)となる。その後, 隣接正常細胞, 食細胞などでこの小体は処理される。このようなアポトーシスが, 頬, 口腔前庭, 歯などの発生過程で見られる。(1)頬の形成は上・下顎隆起の上皮細胞と顔面間葉細胞の分裂, 増殖によるmergingにより両隆起の裂溝が満たされ形成される。アポトーシスは特に両隆起の移行部とその周辺に発現する。(2)口腔前庭の発生は唇溝堤の中央部に一過性にアポトーシスが出現した後, 上皮帯が口腔粘膜上皮へと分化し, 口腔前庭になる。なお, 上唇, 下唇小帯, 頬小帯の成因は唇溝堤が離開せずに上皮帯として残ったものである。(3)歯胚のアポトーシスは上皮の陥入期からみられるが, 特に, 歯乳頭形成期のエナメル結節に著明に見られる。その後は歯堤に限局するようになる。(4)中間セメント質形成時にもアポトーシスがみられるが形態的に典型的なアポトーシスの過程をとらない。このように発生途上の口腔・顔面領域においてのアポトーシスは, 第1と第2鰓弓, 第2と第3鰓弓との移行部, 頬の発生, 1次口蓋, 2次口蓋, 口腔前庭, 歯胚の発生過程などで確認されており, ここでの細胞死は細胞の分裂, 増殖と同じ次元の現象として捉える必要がある。
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