宇宙線中の超重核の観測
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
気球に搭載した固体飛跡検出器を用いて宇宙線中の超重核の観測を行なって。観測が行なわれた三陸における地磁気による平均カットオフエネルギーは, Z∿50の粒子に対して3.5GeV/amuである。解析に使用した検出器の有効面積と観測時間との積は, 全体で1084.7m^2・hrであった。飛跡の検出にはCNシートを使用し, 核種の同定はCNおよびCTAシートを用いて行なった。アンモニア蒸気法によるスキャン法を用いて, Z≨45の入射粒子による飛跡を7本検出した。気球上層大気中における核破砕による強度の減衰を考慮した結果, 大気頂上における超重核宇宙の強度として以下のような値を得た。Z≨45,E≨3.5GeV/amuにたいして (3.9±1.5)×10^<-6>particles/m^2・sr・sec. 超重核の観測と同時に, 原子核乾板あるいはCR-39を用いて鉄核の観測も行なった。これらの解析から, 大気頂上における鉄核の強度として0.11±0.01particles/m^2・sr・secを得た。超重核と鉄核との強度比は以下のようになる。[Z≨45]/[Fe]=(3.5±1.6)×10^<-5> この値は, 核種グループの違いを考慮すればHEAO-3の[44⪈Z⪈58]/[Fe]の値と良く一致している。一方, Ariel 6による[Z≨50]/[Fe]の結果は, 両者より大きな値を示している。また, 超重核と鉄核との強度比のエネルギー分布については, [Z≨45]/[Fe]の値はエネルギーとともに減少する傾向を示し, HEAO-3の結果も多少の減少傾向を示しているのに対して, Ariel 6の結果は比の値がエネルギーとともに増加する傾向を示している。発生源から地球近傍に到達するまでの伝播過程における宇宙線と星間媒質との相互作用による, 宇宙線のエネルギースペクトルの変化を計算した。地球近傍で観測されるZ≨45の宇宙線中には伝播中に核衡突で生成された2次粒子が豊富に存在する。このためZ≨45の粒子のエネルギースペクトルの形は, 1次粒子が大部分を占める鉄核のものとは異なることが明らかになった。すなわち, 超重核宇宙線のエネルギースペクトルの形は, 2次粒子を生成する核衡突の微分断面積のエネルギー依存性を反映するが, 鉄核の場合にはその効果はきわめて小さい。さらに, 質量数Aが78以上の粒子が陽子と衡突する際に10⪈⊿A⪈40の粒子を生成する微分断面積は, 1GeV/amuにピークを持つ。したがって, この断面積がエネルギーとともに減少する1∿3GeV/amuにおいて, 地球近傍で観測される宇宙線の[超重核]/[鉄核]の値が減少することになる。この結果は, Ariel 6を除く観測が示す[超重核]/[鉄核]のエネルギー分布を説明し, 超重核と鉄核のエネルギースペクトルの差を, 宇宙線の伝播の効果から解消可能であることを示した。
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
関連論文
- 2a-M-12 地球磁気圏内外での炭素・酸素(数+MeV/n)の強度変化について
- 2a-M-10 GEOTAIL衛星搭載LD検出器による地球磁気圏substormの観測
- 22pSE-4 のぞみが観測した沿磁力線電子から磁気フラックスロープの太陽表面接続状態を探る
- 30aSK-2 のぞみ衛星搭載EISによる粒子観測(1)
- 28a-YE-4 CIR高速粒子の強度と太陽風速度の相関関係
- 28a-YE-3 のぞみ衛星搭載EIS検出器による太陽粒子イベントの初期観測結果
- 28a-YE-1 GEOTAIL衛星が観測した1993年1月から1996年5月までの銀河宇宙粒子線II : 元素組成
- 2a-M-9 GEOTAIL衛星が観測した1993年1月から1996年5月までの銀河宇宙粒子線
- 23p-H-3 GEOTAIL衛星による銀河宇宙粒子線の観測
- 23p-H-2 GEOTAIL衛星により観測されたHeavy-Ion rich Event
- 23p-H-1 GEOTAIL-HEP粒子線望遠鏡によるCIR粒子のエネルギースペクトルの時間変化
- 31p-YX-9 GEOTAIL衛星で観測されたCIR粒子と太陽風の関係
- 31p-YX-8 GEOTAIL-HEPの観測した粒子(10-30MeV/n)強度の変動について
- 8a-D-12 GEOTAIL衛星の観測によるCIR粒子のエネルギースペクトルの変化の研究
- 8a-D-11 静穏期の低エネルギー(
- 8a-D-10 GEOTAIL衛星による硫黄元素(宇宙線異常成分)の観測
- 29p-SD-6 GEOTAIL衛星によるCIRイベントの重イオン観測II
- 29p-SD-5 GEOTAIL衛星によるCME駆動衝撃波に関係した重イオンイベントの観測
- 28a-YJ-5 GEOTAIL衛星によるCIRイベントの重イオン観測
- 1p-J-13 Geotail衛星による宇宙粒子線異常成分の観測(II)
- 4a-B-5 高エネルギー重イオンのシリコン検出器におけるエネルギー損失ストラグリング
- 31p-YT-5 GEOTAIL衛星による宇宙線異常成分の観測
- 多段式多重線比例計数管による一次宇宙線陽子のエネルギースペクトルの測定
- 多段式多重線比例計数管による宇宙線陽子及びヘリウム原子核の測定
- 3a-AF-1 多段式比例計数管による高エネルギー宇宙線観測計画
- 30a-BF-12 プラスティック飛跡検出器による宇宙単極磁荷捜し
- 29a-ME-13 1次宇宙線中の超重核の測定
- 固体飛跡検出器とX線フィルムによる一次宇宙線中の超重核の測定
- 1p-SE-7 一次宇宙線中のZ>26のfluxの測定 VI
- 3a-FE-3 一次宇宙線中のZ>26核のflwxの測定V
- 30a-C-8 1次宇宙線中のZ>26核のfluxの測定IV
- 固体飛跡検出器による一次宇宙線中の超重核の測定
- 5a-F-12 1次宇宙線中のZ>26核のfluxの測定.III
- 5a-A-12 X線フィルムによる宇宙線粒子の荷電弁別
- 11a-D-2 X線フィルムによる相対論的速度領域における重イオンの荷電弁別
- 6a-D-12 Geotail衛星高エネルギー粒子観測IV
- 6a-D-11 Geotail衛星高エネルギー粒子観測III
- 1a-Y-13 GEOTAIL衛星による電子、陽子観測
- Java Graphicsを用いた光波の干渉実験のシミュレーション
- 3a-S-11 超重核の測定、予備実験 VI
- 固体飛跡検出器,X線フィルムおよび原子核乾板による一次宇宙線中の超重核の測定
- 2a-D-2 超重原子核の測定(I)
- 2p-G-8 Bevalac加速器を用いたGeotail衛星搭載用粒子線望遠鏡の同位体弁別[I] HEP-HI
- 2p-G-7 RINGサイクロトロンを用いたGeotail衛星搭載用粒子線望遠鏡の同位体弁別[II] HEP-MI
- 10p-C-4 超重核の測定 予備実験 V
- 10p-C-3 超重核の測定 予備実験 IV
- 13a-Q-6 高エネルギー重イオンのシリコン検出器におけるエネルギー損失
- 25a-L-5 シリコン検出器における重粒子のエネルギー損失とそのゆらぎ
- 30a-E-8 GE0TAIL-HEP-HI同位体粒子線望遠鏡のLBL-BEVALAC実験
- 14p-C-1 静止気象衛星「ひまわり」による太陽フレア粒子の観測V
- 3a-FE-2 電離損失の相対論的増加を利用した高エネルギー宇宙線測定器
- 6p-F-4 超重核測定のための固体飛跡検出器の特性
- 3a-AF-3 Plastic film による重一次宇宙線のisotope resolution
- 9a-T-5 Plastic filmによる高速重イオンの核電荷弁別のための較正
- 2p-K-4 位置感応型△E検出器の性能試験
- 宇宙線中の超重核の観測
- 11p-C-6 1次宇宙線中のZ6>26核のfluxの測定II