β-カロチンの培養細胞に対する生物活性
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概要
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近年, ガンの化学予防や制ガン剤としての利用で注目されているレチノイドは副作用が強く,ガンのプロモーターにもなり得る可能性が示唆され, その誘導体や関連物質の開発と共に, 疫学調査の結果から緑黄色野菜に含まれる天然のカロチノイドの抗腫瘍活性が見直されている。しかしβーカロチンの生物効力についての基礎実験は少いので, polyprenoic acid E5166と同様, 抗腫瘍効果と相関性のある種々の生物活性を, in vitroの系で調べ, 以下の結果を得た。1.培養細胞へのβ-カロチン添加について, クロロホルム溶解物を培佐波とソニケーションする方法によって, 分散が可能となった。2.β-カロチンではSwiss 3T3 細胞の増殖を添加3日目からその作用時間及び用量に依存して抑制した。しかしこの抑制は, 細胞死を伴うようなものではなかった。即ち, 20μM, 7日間作用でも, 死滅せず, 細胞毒性は認められなかった。3.DNA合成への抑制は,4時間作用で出初め, 24時間作用で54%と最火を示したが, 72時間では31%と回復した。またその抑制は, βーカロチンの用量に依存して増強された。4.RNA合成への抑制も24時間作用で25%であったが, 72時間では5%に回復した。5.蛋白合成はcontrolの97〜104%で無影響と推定された。6.膜輸送能に関して, アミノ酸(AIB)の取り込みは, 時間, 用量共無影響であった。7.糖(2DG)取り込みは,20μM, 72時間作用で188%と促進され, その結果は, 時間と用量に依存していた。8.2 D G untake のkinetic解析では, 前回のE5166と同様,Km値は変らないが,Vmax値が1.6倍に増加し糖輸送のキャリャーの数の増加が示唆された。9.培養液中のβーカロチンは, 紫外部の325nm附近の波長にも.30時間新しいピークの出現はなく, ビタミンAに代謝転換された現象は認められなかった。10.β-カロチンの最大吸収液長460nmでの吸光度による残存率は2時間で50%と急減し24時間後は全然ピークが認められず, β-カロチンが, 水溶旅中に分散された場合は, 不安定であることが証明された。またその残存率は, 培地中の細胞の有無と関係しなかった。1 1 .βーカロチン添加後, 早期に見られたDNA及びRNA合成の抑制は, 培地中で分解される迄にβーカロチンそれ自体が細胞にあたえた影響と考えられる。12.一方添加されたβ-カロチンが分解されてしまってからみられた糖輸送促進は,βーカロチンが添加直後に細胞にあたえた何らかの作用が引き金となって起した可能性が推測された。13.βーカロチンはレチノイドと同様の抗腫瘍効果は期待できないが, ビタミンAとは異る薬理作用をもつ可能性も示唆され, 副作用が少いことから, 化学予防として利用の可能性があると考えられた。
- 園田学園女子大学の論文
- 1986-03-20
著者
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