<原著> 神経性無食欲症の精神分析的精神療法 : 栄養相談の治療的意義
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概要
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神経性無食欲症患者にとってしばしば食事は、自己愛的充足の手段である。このような患者は無表情で食事以外に興味を示さないが、筆者は栄養相談として食事記録やカロリーブックを介して患者と関わり続けた。その後、徐々に患者は情緒を成長し摂食障害から脱却する過程を体験することができた。治療において、筆者の中に生まれた逆転移から共感へとつながる過程が重要であった。このような患者の精神療法において、食事記録やカロリーブックは患者にとって情緒の成長に大きく貢献した。また治療者にとって陰性の逆転移を扱い易くする空間を提供することになった。そして患者一治療者という型にはまった関係を情緒的交流の空間へと橋渡したと考えられる。神経性無食欲症の治療において、筆者は食事記録やカロリーブックを使った栄養相談の治療的意義をWinnicott､D.W.のいう移行対象(transitionalobject)として捉え直した。更に、移行対象を介して継続した関わりは、患者のみでなく治療者の情緒も治療に有効に展開・発達させると思われる。Patients with anorexia nervosa often lack facial expressions and show no interest except in food. The patients deal with food as objects that fulfill their narcissistic needs. To such attitude, therapists often develop countertransference. At the beginning of therapy with a 17-years-old female patient with anorexia nervosa, the author provided her with nutritional consultation by using a meal record and a calorie book. As a result, thepatient was gradually able to express her own affection and free herself off anorexia. During therapy, it seemed an important process that the therapist and the patient communicated without feeling threatened by looking together at the meal record and the calorie book, and that the therapist could transform his negative countertransference into empathy.In this paper, the author suggests that both the patient and the therapist used a meal record written by the patient herself and a calorie book as transitional objects (Winnicott, D.W.). These contributed to generatingnon-objectionable positive affection between them and gave the space to therapeutically deal with his own countertransference.In conclusion, the author proposes that nonverbal communication between the patient and the therapist through transitional objects might help not only the patient but also the therapist to develop their emotional responsiveness and to promote affective communication between them.
- 愛知教育大学の論文
- 2002-11-20
著者
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