グラジオラス球茎の休眠打破におけるサイトカイニンの作用機構(農学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
サイトカイニン類が種々の球根植物の休眼打破に効果があることは, 塚本らがすでに報告している。本報告では, グラジオラス球茎の休眠覚醒にともなう内生サイトカイニンの消長とその作用機構を検討した。一般に認められているグラジオラス球茎の休眠打破に必要な低温処理を行っても, 処理直後では内生サイトカイニンの活性化はほとんど認められなかったが, 低温処理後10日間高温(30℃)下においた球茎では内生サイトカイニン活性の著しい増加が認められた。種々の条件で貯蔵した球茎の頂芽部(0.2(cm)^3)を無菌培養し, その発芽状態を調べたところ, 低温処理直後の球茎の頂芽部は発芽しないが, 低温処理後30℃に2週間貯蔵した球茎の頂芽部は培養3週間でほぼ100%の発芽率が認められた。一方低温処理直後の球茎の頂芽部を1ppmベンジルアデニンを含む培地で培養するとすべての個体が発芽した。頂芽部の培養組織片の大きさを大(1(cm)^3), 中(0.5(cm)^3), 小(0.2(cm)^3)に分けて培養したところ, 大きい組織片では低温処理直後に培養しても発芽するが, 中および小さい組織片では低温処理後10∿15日間30℃に貯蔵した球茎でないと発芽しなかった。また, 収穫直後の球茎から大, 中, 小の頂芽部組織片を切りとり, 試験管内で5週間低温処理を行い, 以後25℃で45日間培養しても発芽する個体は認められなかった。つぎに, ベンジルアデニン-8-^<14>Cを用い, サイトカイニンとグラジオラス球茎の発芽抑制物質(アブシジン酸, ピロガロール, クマリン)の組合せ処理による, サイトカイニンの球茎の休眠打破における作用機作を検討した。その結果, 抑制物質と^<14>C-ベンジルアデニン混合処理区での^<14>CのRNAへのとりこみ率が^<14>C-ベンジルアデニン単独処理区にくらべて非常に低かった。このことから抑制物質とサイトカイニンがRNA代謝に関与して, グラジオラス球茎の休眠を制御しているものと思われる。
- 京都府立大学の論文
- 1976-11-30
著者
関連論文
- 光の強さと'丸葉コマツナ'の生体内硝酸態窒素の蓄積(農学部門)
- 蔬菜水耕栽培の実用化に関する研究 XVII : 定植時の葉数がトマトの生育・収量におよぼす影響(農学部門)
- トウガラシ属の種子発芽にみられる変温要求性(農学部門)
- トウガラシの種間雑種の台木としての利用について(農学部門)
- ザイールのキブ湖地域における野菜生産とそれにかかわる諸問題(農学部門)
- ケニアのエンブ地区における伝統野菜の栽培(農学部門)
- サイトカイニンおよびオーキシンがテッポウユリ・ダリアの出葉形態に及ぼす影響(農学部門)
- グラジオラス球茎の休眠打破におけるサイトカイニンの作用機構(農学部門)