<論文>地域社会の近代化と二重構造
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概要
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戦前〜戦後の一時期にかけて隆盛した日本近代の特殊性をめぐる諸議論(日本資本主義論争や近代主義)において二重構造は重要な主題とされたが, 当時のパラダイムには西欧近代を範とする文明論的発展史観が色濃く投影されており, その点でこれらの論争は限界を抱えていた。しかしそのような文明論的想定を払拭するなら, 二重構造という分析枠組は今日でも依然少なからぬ理論的意義を有していると考える。本稿の主張は以下の通りである。(1)従来, 二重構造の下位部門には「遅れた」イメージが付与されがちであったが, それは単なる文化的遅滞現象とみなされるべきではない。下位部門も一定の近代化を遂げ, 上位部門との対抗作用の中で独自の公共性を培ってきた。(2)産業領域において従属的地位を余儀なくされたことにより, そのような公共的活動は主に地域社会の領域で展開することになった。(3)政策利害的に矛盾を抱えつつも, 政府にとって二重構造の下位部門は政治的支持基盤を維持する必要から無視し得ない意味をもち, そのための政策的対応を余儀なくされている。以上の諸点は近代化論のパラダイムでは十分に斟酌されなかったが, 公共性の日本的特質を考える上で再考の余地が残されていると考える。
- 福岡国際大学・福岡女子短期大学の論文
- 2000-07-17
著者
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